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医療用漢方薬 有効性だけでなく経済性に関するエビデンスの構築・発信を

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2017年07月12日 PM03:00

医療用漢方薬の医療保険外しに関する議論が再燃する可能性を指摘

日本経済大学 経営学部長の赤瀬朋秀氏は、第68回日本東洋医学会学術集会のシンポジウムで、国の社会保障費がひっ迫するなかで、今後も医療用漢方薬の医療保険外しに関する議論が再燃する可能性を指摘。漢方薬をより有効に医療で活用していくために、医療用漢方薬の有効性のエビデンスにとどまらず、経済性に関するエビデンスも構築し、これを医療関係者だけでなく国民にも広く発信していく必要性を強調した。


日本経済大学 経営学部長 赤瀬朋秀氏

赤瀬氏は平成10年度末の公的債務総額553兆円が平成20年度末には770兆円と10年間で約1.4倍に増加、これが平成20年度から7年間でさらに約1.4倍になるなど、国の財政状況が急激に悪化していることを指摘。このなかで現在一般会計の約3分の1を占める社会保障費は今後の高齢化の進展とともにさらに増加していくとの認識を示した。

そのうえで医療費の増加に関しては、高齢化のみが理由ではなく、近年の免疫チェックポイント阻害薬・オプジーボのようにがん治療薬を中心に高額な新薬が次々と登場していることも大きくかかわっていると分析した。実例として厚生労働省が平成27年に実施した第20回医療経済実態調査では、調査対象病院の材料費に占める医薬品購入費の割合が56.1%に対し、ほぼ同時期の北海道がんセンターの平成26年3月期決算データでは、材料費の中に占める医薬品購入費の割合が76.6%であることを紹介した。

赤瀬氏は、このような背景から、国の経済財政諮問会議を通じた専門外の識者による医療への関与を強化しつつある現状を説明。しかし、同会議下の経済・財政一体改革推進委員会に設けられた社会保障ワーキンググループで、医療計画や地域包括ケアシステムなどの医療提供体制や薬剤の適正使用などでも踏み込んだ議論をし始めていることについては「はっきり言って大きなお世話」と切り捨てた。

医療用漢方薬の医療保険外し圧力が強まる可能性を指摘

また、同ワーキンググループの薬剤費抑制策に関する諸外国の事例検討で、保険償還範囲の限定(ポジティブリスト)に言及していることに触れ、医療用漢方薬の医療保険外し圧力が強まる可能性を指摘した。

そのうえで赤瀬氏は、過去の医療用漢方薬の医療保険外しの議論が過熱した平成5年、平成6年、平成21年の3時点について、その前後の医療費関連因子、薬事関連因子、社会・国家財政関連因子との関連分析を紹介。分析結果から、この3時点直前に、医療用漢方製剤の生産金額の増加と対前年比伸び率の上昇、国民医療費と医療費の対国民所得比およびその伸び率の上昇、社会保障支出の増加がいずれも確認された時期であることが明らかになったという。また、社会・国家財政関連因子では、国民所得、貿易収支、経常収支が悪化した時期と相関が強いとした。

とりわけ平成5~6年、平成21年は、国民医療費の総額がそれぞれ25兆円、35兆円を超えた直後の時期に符合することから、今後の医療用漢方薬の保険外し議論が再燃する時期として(1)50兆円突破が予測される平成32~35年、(2)国民医療費の急速な伸びが予想される平成30年前後、(3)貿易収支が今年度赤字に転じた場合は平成30年後、という時期になる可能性があると予測し、既に「現時点では予断を許さない状況」との見解を示した。

そうしたなかで赤瀬氏は今後保険償還対象となる薬剤に導入される費用対効果の検証について、平成27年に中央社会保険医療協議会に提出された資料を基に「費用」の考え方は、単なる個別医療技術の費用にとどまらず、それに伴う外来・入院医療費、検査費、その他の医療費が含まれるとし、この観点から医療ビッグデータを活用した漢方薬のエビデンス発信の必要性を強調。「漢方薬の包括的な経済有用性にどのようにつながるのか、平均在院日数などの病院経営指標に対する影響も重要」と訴えた。

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