方剤名と商品名が異なる“隠れ”防風通聖散のOTCも
ワゲン福祉会 総合相模更生病院 薬剤部の加藤鈴氏らは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の副作用報告データの分析から、医療用で副作用報告の多い漢方製剤である防風通聖散に関しては、含有量の少ないOTC製剤でも副作用発現状況は医療用と変わりがないことを明らかにし、患者への副作用初期症状の情報提供が重要であるとの認識を示した。6月に名古屋で開催された第68回日本東洋医学会学術集会でこの結果を発表した。
加藤氏らは、まず医療用漢方製剤のうち副作用報告が多い、芍薬甘草湯、防風通聖散、柴苓湯、抑肝散、柴胡加竜骨牡牡蛎湯の5方剤についてOTC製剤の全品目数、方剤名と商品名が異なる品目数を調査。このうち防風通聖散が全33品目中、方剤名と商品名が異なる品目が15品目(例:コッコアポシリーズ、ナイシトールシリーズ)と最も多いことがわかった。方剤名と商品名が異なる防風通聖散OTC製剤の構成生薬含有量は医療用の2/3、1/2量、同量などさまざまだった。
薬剤師や登録販売者は指導を強化する必要
防風通聖散は、重い副作用として肝機能障害といった肝・胆道系副作用、間質性肺炎といった肺・呼吸器系副作用が知られている。加藤氏らが医療用の防風通聖散の副作用について、同様に2005~2014年の10年間のPMDAデータを調査したところ、副作用全体、肝・胆道系副作用、肺・呼吸器系副作用のいずれも女性での発現頻度が高く、肝・胆道系副作用では30~50歳代の比較的若年層、肺・呼吸器系副作用は50~80歳代の高齢層に多いことがわかっている。また、服用期間との関係では、肝・胆道系副作用は服用期間が長期になるほど、肺・呼吸器系副作用は服用開始から2か月以内の発現が多かったという。
一方でOTC製剤の防風通聖散では年齢、性別、投与期間などとの明確な相関傾向は認められなかった。
ただし、PMDAに報告されていた防風通聖散の医療用製剤、OTC製剤それぞれの副作用件数中に占める各副作用の割合は、肝・胆道系副作用が医療用製剤で52.1%、OTC製剤で55.3%、肺・呼吸器系副作用が医療用製剤で30.9%、OTC製剤で26.3%、その他の副作用が医療用製剤で14.7%、OTC製剤で10.5%。各副作用で医療用製剤とOTC製剤でほぼ同程度であり、構成生薬含有量が医療用製剤よりも少ないOTC製剤でも同様の注意が必要であることが示唆された。このため加藤氏らは「OTC製剤の患者用添付文書だけでは、患者に十分な副作用症状への理解が得られない可能性があるため、薬剤師や登録販売者は指導を強化する必要がある」との見解を表明している。
▼関連リンク
・第68回日本東洋医学会学術集会