心血管疾患リスクの高い2型糖尿病患者7,637人対象の「DEVOTE 試験」
ノボ ノルディスクファーマ株式会社は7月4日、糖尿病に関するメディア向け勉強会を開催した。基礎インスリン製剤「トレシーバ(R)」(一般名:インスリン デグルデク)とインスリン グラルギンU100を比較した「DEVOTE試験」の結果について、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝教授が講演。試験結果は、第77回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA 2017)で発表され、「The New England Journal of Medicine」にも発表された。
DEVOTE試験は、トレシーバとインスリン グラルギンU100 を比較し、心血管への安全性を確認するために実施された長期、多施設、無作為割り付け、二重盲検、event-driven試験。20か国以上434施設で実施され、約2年間追跡された。対象は、心血管疾患リスクの高い2型糖尿病患者7,637人(トレシーバ群:n=3,818、インスリン グラルギンU100群: n=3,819)。主要評価項目は、無作為割付け時点から、主要な心血管イベント(MACE)の心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中のいずれかが最初に発現するまでの時間とした。重要な副次的評価項目は、重大な夜間低血糖を含む、重症低血糖の発現件数。
重大な低血糖の発現件数を40%低下に
同試験の結果、トレシーバは、インスリン グラルギンU100と比較して、主要評価項目についてHR0.91(95%信頼区間[CI]:0.78; 1.06, p=0.209)を示し、達成。MACEはそれぞれ、心血管死(HR=0.96, 95%CI: 0.76; 1.21, p=0.714)、非致死性心筋梗塞(HR=0.85, 95%CI: 0.68; 1.06, p=0.150)、非致死性脳卒中(HR=0.90, 95%CI: 0.65; 1.23, p=0.502)だった。
副次的評価項目の結果では、トレシーバ群は、重大な低血糖の発現件数を40%低下させ(RR=0.60, 95%CI: 0.48; 0.76, p<0.001)、重大な夜間低血糖の発現件数を53%低下させた(RR=0.47, 95%CI: 0.31; 0.73, p<0.001)。
また、事後解析の結果、試験終了時のHbA1cの群間差の推定値(ETD)は、0.01%(95%CI: -0.05; 0.07, p=0.779)で血糖コントロールは両群で同レベル。2年後の空腹時血糖値は、有意に低下した(ETD-7.2mg/dL, 95%CI: -10.3; -4.1, p<0.001)。
「患者、医師ともに『低血糖に対する恐怖心』の壁がある」(門脇氏)
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科
門脇孝教授
門脇氏は「患者、医師ともに治療成功の前にたちはだかる『低血糖に対する恐怖心』の壁がある」と指摘。また、重症低血糖が心血管系のリスクと関係している可能性があることから、「いかに重症低血糖のリスクを低下させながら、血糖コントロールを正常に近づけられるかが治療を進める上での大きな課題だ」と述べた。
また、「DEVOTE試験は2型糖尿病の低血糖について、インスリン デグルデクの他の臨床試験(BEGIN、SWITCH)と比較して一貫性のある結果を示したと言える」と門脇氏は解説。「今回の試験では、心血管系リスクの高い2型糖尿病患者に対して、トレシーバが対象薬よりも重大な低血糖リスクが低いことが示された」とし、「今後の薬剤選択にも重要なデータとなりうる」と述べた。
さらに、高齢者の糖尿病治療についても言及。門脇氏は「重症低血糖が高齢者で起こると、心血管イベントを増加させる可能性が高いだけでなく、認知機能障害を引き起こすことが多くのデータからわかっている」とし、「『高齢者糖尿病ガイドライン2017』においても、糖尿病治療をする上では重症血糖を回避することが重要だとして、血糖コントロール目標を設定している」と述べた。最後に、「糖尿病の2/3以上が65歳以上、1/3以上が75歳以上という状況において、今回のDEVOTE試験の結果は重要である」と述べ、「高齢者の糖尿病治療で、重症低血糖のリスクが低いインスリン製剤を選択することに意義があるのではないかと考える」とした。
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