この調査は、多剤投薬患者の実態や処方内容、薬剤師の関与を全国規模で明らかにすることによって、薬剤師による効果的な多剤投薬回避方法を探索するもの。
「多剤投薬の患者に対する病院薬剤師の業務実態調査」として、2015年度から3年間の計画で実施している。このほど鹿児島市で開かれた医療薬学フォーラムで解析結果の第1報を発表した。
学術第一小委員会は、16年3月1日から31日までに退院した患者のうち、▽65歳以上▽入院時に6剤以上の内服薬を服用している▽入院時に持参薬鑑別を実施した▽入院中に薬学的管理に関与した――などの条件を満たした多剤投薬症例を、全国の病院から網羅的に収集。調査に応じた80施設から414例の報告があり、このうち有効回答の406例を対象に解析した。
入院中に持参薬を1剤以上削減した症例を削減群、それ以外の症例を非削減群に分類した。薬剤削減群(239例)は入院時に平均10.2剤を服用していたが、退院時には平均8.4剤に減少。非削減群(167例)は入院時に平均9.4剤を服用しており、退院時には平均9.7剤になっていた。
それぞれの群に対する病院薬剤師の業務実態を調べたところ、入院直後の持参薬鑑別時などに、薬剤師が減量や中止などの処方提案を実施している割合は、非削減群では15.4%だったのに対し、薬剤削減群では49.1%と高かった。医師と治療方針や処方内容の検討や相談を実施している割合も、非削減群では40.1%だったのに対し、薬剤削減群では63.0%と上回っていた。
また、入院期間中の薬剤師の業務内容を比較したところ、薬剤削減群では、有効性や副作用、検査値などを確認して処方提案を実施している割合が、非削減群に比べて高かった。
これらの結果から学術第一小委員会は「入院時や入院期間中における有効性、安全性、必要性の確認に基づく処方提案は、多剤投薬患者の薬剤削減には効果的」としている。
また、病床機能区分別に薬剤削減状況を調べたところ、全体に占める薬剤削減群の割合は、急性期病床54.2%、回復期病床74.4%、慢性期病床77.1%だった。学術第一小委員会は「どの病期においても入院中は薬剤見直しの好機であり、特に回復期や慢性期では効果的であると示唆された」と報告した。
ただ、他医療機関や保険薬局に対する薬剤情報提供書として「薬剤管理サマリー」を記載している割合は、非削減群の19.3%に対し、薬剤削減群では30.3%と上回っていたものの、いずれも低かった。その実施率向上が今後の課題と指摘している。