不明だった末梢組織の糖利用促進にかかわる神経細胞
生理学研究所は7月3日、食欲を抑え、熱産生を高めて末梢組織の糖利用を促進する神経細胞を発見したと発表した。この研究は、同研究所の箕越靖彦教授ら、星薬科大学の塩田清二特任教授、九州大学大学院医学研究院および東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の小川佳宏教授らの共同研究グループによるもの。研究結果は、米糖尿病学会学会誌「diabetes」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
骨格筋など末梢組織での糖の利用は、インスリンによって促進される。しかし、近年の研究により、脳、とくに視床下部の神経細胞が、単独あるいはインスリンと協同して、末梢組織の糖の利用を促進することがわかってきた。しかし、どの神経細胞が末梢組織の糖利用を促進するかは不明なままだった。
視床下部腹内側核SF1/Ad4BPニューロンに注目
研究グループは、インスリンの働きを高める神経細胞を明らかにすることを目的に、視床下部腹内側核SF1/Ad4BPニューロン(SF1ニューロン)に注目。このニューロンを選択的に活性化させた時の、マウスの摂食量、熱産生量、全身の糖利用、末梢組織への糖の取り込み量を調べた。その結果、マウスSF1ニューロンを選択的に活性化すると、摂食量が低下し、熱産生量が増加するとともに、骨格筋、心臓、褐色脂肪組織で選択的に糖の取り込みが増加。さらに、このマウスにインスリンを投与すると、上記組織での糖の取り込みがさらに亢進した。脂肪を貯蔵する白色脂肪組織では糖の取り込みに変化はなかったという。
また、インスリンの働きを細胞内に伝達するインスリン受容体と、細胞内タンパク質Aktの活性化状態を調べた結果、SF1ニューロンを選択的に活性化すると、骨格筋でこれらのタンパク質が活性化することがわかったという。今回の結果は、肥満や糖尿病の病因解明、新しい治療法の確立に繋がることが期待される、と研究グループは述べている。
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・生理学研究所 プレスリリース