小児白血病の約15%を占める小児T細胞性急性リンパ性白血病
東京大学医学部附属病院は7月4日、小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)における、極めて高い悪性度に関連する融合遺伝子としてSPI1融合遺伝子を発見したと発表した。この研究は、同病院小児科の滝田順子准教授らが、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授らと共同で行ったもの。研究成果は「Nature Genetics」のオンライン版で公開されている。
画像はリリースより
白血病は血液中の細胞のうち、白血球になるもとの細胞から発生する悪性腫瘍。小児期の悪性腫瘍の中では最も高頻度に発生し、T-ALLは小児白血病の約15%を占めている。薬物療法を中心とした集学的治療の強化によって全体の約70%の治癒が期待できるが、とくに小児では、成長障害、臓器機能障害、不妊など、治療後に発生する障害(晩期障害)が大きな課題となっている。また、治療抵抗例や再発した場合の治癒は極めて難しいのが現状であることから、分子病態に立脚した治療の最適化は、小児T-ALL患者の治癒率改善と重篤な副作用や晩期障害の回避に重要といえる。
SPI1融合遺伝子が白血病化を引き起こす可能性
今回、研究グループは、次世代シーケンサー技術を用いて、小児T-ALL123例のゲノム上にみられる遺伝子異常や融合遺伝子を含む構造変化、遺伝子発現の異常の全体像を解明した。その結果、極めて高い悪性度に関連するSPI1融合遺伝子を約4%の例に同定。SPI1融合遺伝子は、T細胞の分化の停止と細胞増殖をもたらし、それが白血病化を引き起こす可能性を示したという。
また、遺伝子発現パターンと分子学的特徴から小児T-ALLは5群に分類されることを見出し、それぞれの群を特徴づける遺伝子発現や遺伝子異常と臨床的特性も解明。SPI1融合遺伝子を有する群は、他とは異なる特徴的な一群であることを示し、新たなT-ALLのサブグループであることを示したという。
これらの成果は、T-ALLの予後予測、精度の高い分子診断法の開発に貢献し、治療の最適化の実現に役立つものと期待される。今後は、エピゲノムの解析を加えた統合的解析を行い、さらなる治療標的やバイオマーカーの同定を目指す、と研究グループは述べている。
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・東京大学医学部附属病院 プレス発表