■関係者が報告
日本病院薬剤師会はこのほど、2019年度から始まる改訂コアカリキュラムに準拠した病院実習で、指導薬剤師が学生の進捗状況を評価する基準の原案を、同会のウェブサイトで公開した。19年度の実務実習から評価の考え方や方法が大きく変わる。円滑に移行できるように、新たな評価基準を現在の実務実習で試行するよう各病院に呼びかけている。一方、薬局実習における試行は昨年度から日本薬剤師会が開始しており、今年9月からは全国で幅広く実施する計画だ。両会は、これらのトライアルによって新たな評価方法に慣れてもらうほか、問題点をフィードバックしてもらって改善し、19年度に備える考えだ。
1、2日に鹿児島市で開かれた医療薬学フォーラムのシンポジウムに関係者が登壇。改訂コアカリに基づく実務実習の評価方法やウェブシステムの概要、今後の展望などを討議した。
コアカリの改訂に伴って学習成果基盤型教育(OBE)の概念が導入され、実務実習の評価方法が大きく変わる。多数の項目に及ぶ個々の到達目標(SBO)ごとに学生の到達度を細かく評価するのではなく、身につけてほしい内容をもっと大きな枠組みで設定し、知識や技能、態度を総合的に評価する「概略評価」が取り入れられる。
実務実習カリキュラムのうち概略評価の対象になるのは、[1]薬学臨床の基礎[2]処方箋に基づく調剤[3]薬物療法の実践――の3領域。実務実習で身につけてほしい内容について大きな枠組みごとに、習得が容易なレベルから高度なレベルまで4段階のステップで表示。概略評価を行う上でのチェックポイントとしてSBOを活用しながら、学生がどの段階まで成長したのかを2~4週間ごとに評価する。
日病薬薬学教育委員会委員長の石井伊都子氏(千葉大学病院教授・薬剤部長)は、新たな評価基準を盛り込んだ▽病院実務実習評価原案▽同簡易版▽代表的8疾患に分類される具体例――を最近、日病薬のウェブサイトで公開したと報告。「これを使って各病院でトライアルを実施し、やってみた結果を、入力フォームに沿ってフィードバックしてほしい」と呼びかけた。
一方、日薬常務理事の永田泰造氏は、昨年度に全国の約120薬局で、薬局実習用の概略評価案の試行を実施したと報告した。今年度も東京都内29薬局での試行を経て9月から全国で幅広く試行を実施したいと言及。過去の試行で、実務実習ガイドラインの理解不足が明らかになったため、今月30日に実務実習指導者全国会議を開き、その周知徹底に努めると語った。
薬学実務実習に関する連絡会議の副座長を務める鈴木匡氏(名古屋市立大学大学院薬学研究科教授)は「概略評価は、実習の指導者が責任ある主観で評価するが、評価の考え方がちぐはぐだと学生や評価者の混乱を招いてしまう」と課題を提示。「研修やワークショップでコンセンサスを得て、共通認識を持って評価にあたってほしい」と求めた。
また、「新たな方法で評価することだけがOBEではない。評価を踏まえ、どのように教えたら学生がより学習目標に近づけるようになるのかを考えて、方略を見直す。このサイクルを回せるかどうかが今後、重要になる」と強調した。
■修正版ウェブシステム試行へ
このほか薬学教育協議会WEBシステム検討委員会の木津純子氏は、機種が異なる実務実習ウェブシステムであっても、大学教員や指導薬剤師が違和感なく使用できるように、薬学教育協議会が音頭をとって、各システムの画面構成や掲載項目などの類似化を推進していると報告した。
現在、企業や大学が作った複数の実務実習ウェブシステムが、各地で使用されている。システムによって仕様が異なるため、複数大学から実習生を受け入れている病院の指導薬剤師は、不便を強いられている。また、ふるさと実習時には大学教員が、その地域で統一されているウェブシステムを使用する場合もあり、利便性に課題があった。
こうした問題を解決すべく同委員会は、システム開発大学や企業を対象にした説明会を昨年7月と今年6月に開催し、画面構成や掲載項目などの方向性を提示した。今後、それを踏まえてウェブシステムが修正される。薬学教育協議会の確認を経た上で、修正版システムのトライアルが18年5月から開始可能になる見通しだ。