致死率約50%のメトホルミン関連乳酸アシドーシス
九州大学は6月30日、糖尿病治療薬メトホルミンの致死的な副作用である乳酸アシドーシスに対して、低酸素状態に対する生体応答反応(低酸素応答)を活性化する薬剤が治療薬として極めて有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大生体防御医学研究所の南嶋洋司特任准教授および慶應義塾大学医学部医化学教室・麻酔学教室の研究グループが、第一三共株式会社と共同で行ったもの。研究成果は米科学雑誌「Molecular and Cellular Biology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
メトホルミンは、世界で最も多く処方されている2型糖尿病の治療薬。血糖低下作用以外にも、がん細胞の増殖抑制・発がん率の低下・寿命の延長など、さまざまな作用を有することが報告されつつある。60年以上使用されている古い薬で薬価が安いことから、今後世界中で内服者数が増加することが予想されている。しかし、腎機能が低下した人がメトホルミンを内服すると、致死率が約50%の「メトホルミン関連乳酸アシドーシス(MALA)」が副作用として発症することが問題となっている。
PHD阻害剤によりマウスの生存率が改善
今回、酸素濃度センサー分子であるプロリン水酸化酵素PHDの酵素活性を抑制する薬剤(PHD阻害剤)によって、乳酸からのブドウ糖の合成(糖新生)に関与する遺伝子群の発現が上昇し、血中乳酸の肝臓や腎臓への取り込みが亢進することによって、乳酸アシドーシスを発症したマウスの生存率を改善できることが判明したという。この成果は、これまで対症療法しか治療法がなかった乳酸アシドーシスに対して、PHD阻害剤が特効薬となる可能性を示したものとなる。
今回の研究成果により、メトホルミン内服に限らず、致死的乳酸アシドーシスへの確実な救済策の確立を期待したいと、研究グループは述べている。
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・九州大学 研究成果