止血パラメーターの測定が術中・術後出血の予測につながるか検討
自治医科大学は6月30日、術前のさまざまな止血パラメーターの中で線溶抑制因子や血小板機能の周術期出血に対する重要性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大整形外科学講座、病態生化学部門、分子病態研究部の研究グループによるもの。研究成果は、英文専門誌の「PLOS ONE」(オンライン版)に掲載されている。
今回の研究は、頚椎の予定手術患者を対象とした前向き観察研究。術前のさまざまな止血パラメーターの測定が、術中、術後出血を予測しうるかを明らかにすることを目的として実施された。その結果、術前に明らかな出血傾向がなくても、詳細な血小板凝集能検査、凝固能、線溶因子と周術期出血量との相関を認めたという。
線溶抑制因子の測定が、術後管理の個別化に繋がる可能性
術中出血と関連したのは、線溶抑制因子であるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)。術後出血と最も関連したのは、肥満だった。PAI-1はアディポサイトカインとしても知られる線溶抑制因子であり、肥満と相関が認められる。PAI-1とBMIの中央値によって、患者を4群に分けるとPAI-1低値の肥満群で出血量が多い傾向が認められたという。
術前検査で線溶抑制因子が低値の患者は、線溶抑制剤であるトラネキサム酸で周術期の出血を軽減できる可能性がある。また、整形外科手術においては深部静脈血栓症の高リスク手術に積極的な抗凝固療法が行われるが、線溶抑制因子が低値の患者では、抗血栓療法が出血を助長する可能性があるという。これらの線溶抑制因子の測定は、周術期出血を予期する新たなスクリーニング検査や術後管理の個別化に繋がる可能性があると研究グループは指摘。今後は、より大きな母集団を対象とした研究により、これらの止血パラメーターの臨床的重要性、そのカットオフ値を証明する必要があるとしている。
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