■厚労科学研究班が薬局を調査‐病院薬剤師と連携課題に
薬局薬剤師が認知症や癌患者の在宅訪問業務を実施し、薬の副作用に対応することで8割以上の患者に副作用の軽減が見られた実態が、厚生労働科学研究班「地域のチーム医療における薬剤師の本質的な機能を明らかにする実証研究」(代表:今井博久東京大学大学院医学系研究科教授)の調査で明らかになった。全国1673薬局が参加した大規模調査から、在宅訪問業務における薬剤師の職能は、副作用への対応策でより発揮されたことが考えられた。地域の多職種連携の状況を調べた結果、病院薬剤師との連携は2割強と十分に行われていない状況も判明し、薬薬連携の推進が課題に浮かび上がった。
研究班は、薬剤師の在宅訪問業務の実態と多職種連携の状況を把握するため、日本薬剤師会の会員薬局を対象に調査を実施。全国1673薬局から回答が得られた。在宅訪問が実施されたのは2645人、患者の年齢は65歳以上が92%と大多数を占めた。
在宅訪問するきっかけとなった主な疾患は、認知症が28%と最も多く、訪問頻度は月2回程度が54%と半数以上を占めた。在宅訪問時に行う業務の実施頻度で最も多かったのは服薬状況の確認で52%、次いで相談応需が46%、残薬整理が42%、日常生活動作(ADL)による副作用チェックが39%となった。
服薬アドヒアランスについては、指示通り飲めていた患者は訪問開始時の57%に対し、直近訪問時は82%まで向上。医療機関や服用薬の状況は98%の患者で一元的に把握されていることが分かった。副作用と思われる症状を確認し、処方提案が受理された事例は26%あった。これにより、症状が改善した患者は75%に上った。
在宅訪問している患者で抗認知症薬が処方されている割合は26%と、約4分の1が薬を服用している実態が判明。ほとんどの薬剤師は正しい適用対象に処方されていると判断していた一方、67%の患者では漫然投与により正しい適用者に処方されていないと判断していた。
副作用が生じたと薬剤師が認識した患者の割合は19%で、内容は興奮・不眠、傾眠が最も多かった。抗認知症薬の副作用への対応策は、処方変更の提案により何らかの対応に至った患者が45%に見られた。対応内容は、他の抗認知症薬に変更した事例が最も多く、その結果83%の患者で副作用が軽減した。薬剤師が薬剤変更や減薬の形で処方提案し、副作用に対応することにより、多くの事例で副作用の軽減が認められる実態が判明した。
また、薬剤師が抗認知症薬の薬効評価を行っている患者の割合は35%となり、薬効評価後の対応策としては経過観察が67%と最も多かった。薬効評価の結果に対し、処方提案により用量変更などの対応策が行われたが、患者の75%は認知度に変化がなかったことから、在宅訪問業務での薬剤師の職能は、副作用への対応でより専門性が発揮されたことが考えられた。
在宅訪問患者における癌患者の割合は261人(11%)で、そのうち113人と約4割に薬剤師が疼痛管理を実施していた。疼痛管理薬の副作用が認められたのは77件で、副作用の内容は便秘、吐き気、眠気の3症状で9割を占め、これら副作用への対応策は下剤使用が半数近くに上った。その結果、85%の患者で副作用が軽減した。
さらに、在宅訪問している薬局の地域連携の状況を見ると、医療介護関連職種と定期的会合を行い連携を実施している薬局は36%、多職種連携を実施している薬局が46%と、約8割の薬局が多職種連携を行っていた。
連携の程度については、主治医74%、ケアマネジャー68%と高い割合を示したが、病院薬剤師と連携できている薬局は26%にとどまり、薬薬連携が十分に行われていない状況が課題に浮上した。