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臨床で実用可能なHDLの機能測定法を開発-神戸大

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2017年06月30日 PM02:10

測定が非現実的なコレステロール“引き抜き”能に代わる測定系

神戸大学は6月27日、コレステロールを運ぶ高比重リポタンパク()の機能を簡便に評価できる新たな測定系を開発したと発表した。この研究は、シスメックス中央研究所の原田周主任研究員と神戸大学医学研究科立証検査医学分野の杜隆嗣特命准教授らが、同大医学研究科循環器内科学分野の平田健一教授らの研究グループと共同で行ったもの。研究結果は、米国臨床化学会議の機関紙「The Journal of Applied Laboratory Medicine: An AACC Publication」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

近年、肥満や糖尿病、喫煙などによりHDLの作用が減弱すると考えられている。細胞に過剰に蓄積したコレステロールをHDLが引き抜く能力(コレステロール“引き抜き”能)を評価するほうが、HDL中のコレステロール量を測定するよりも、心血管病の予防・管理をするうえで有用であるとの報告が相次いでいる。

しかし、HDLのコレステロール“引き抜き”能を測定するためには、放射性同位体で標識したコレステロールをあらかじめ取り込ませた培養細胞が必要であり、また手技が煩雑、かつ全行程に数日を要するため、日常臨床で測定することは非現実的だった。

6時間以内で測定可能なコレステロール“取り込み”能の測定系を開発

今回、新たに開発した測定系では、(1)放射性同位体の代わりに蛍光色素で標識したコレステロールと、被検者より採取した血清に加え(非放射性・無細胞)、(2)HDLに含まれるアポタンパクA-Iの抗体を用いて血清中のHDLを補足し(HDL特異的)、(3)蛍光強度を測定してHDLに取り込まれたコレステロール量を評価する。この測定系にて得られた指標を、従来のコレステロール“引き抜き”能に対し、コレステロール“取り込み”能と命名した。

このコレステロール“取り込み”能は、6時間以内と短行程で測定が可能であり、非常に高い再現性を示したという。また、従来のコレステロール“引き抜き”能と良い相関を示したとしている。さらに、酸化処理を施したHDLでは、コレステロール“取り込み”能は低下を示し、同測定系により実際に機能が低下したHDLを検出できることを確認。次に、神戸大学医学部附属病院での検証において、心血管病の予防・管理への高い有用性を明らかにし、同指標は、悪玉(LDL)や善玉(HDL)コレステロールからは独立した負の危険因子であることがわかったという。

現在、研究グループはさらに大規模な母集団を用いてHDL機能の低下が心血管病の予防・管理にどのようなインパクトを及ぼしているのか検証中。また、今回の研究成果は、停滞しているHDL機能改善を目的とした創薬にも強力な研究基盤技術を提供しうると期待が寄せられている。

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