ApoA2アイソフォームをバイオマーカーとして
国立がん研究センターは6月26日、新たな血液バイオマーカーを用いた試験的膵がん検診の検証を行う臨床研究を実施することを発表した。早期発見が難しい難治がんである膵臓がん(膵がん)を引き起こす可能性の高い慢性膵炎・膵管内乳頭粘液性腫瘍などの疾患や早期の膵がんを効率的に発見する検診法の開発を目指すという。
画像はリリースより
この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業の「血液バイオマーカーを用いた効率的な膵がん検診の実用化」(研究代表者 本田一文)の支援を受け、同センターと日本対がん協会、鹿児島県民総合保健センター、鹿児島大学、鹿児島市立病院、出水総合医療センター、横浜市立大学、神戸大学、金沢大学、滋賀医科大学がチームを組み、実施する。
今回、研究に用いる血液バイオマーカーは、血液中の「アポリポプロテインA2(apoA2)アイソフォーム」というタンパク質。同研究所や米国国立がん研究所(NCI)との共同研究において、膵がんを引き起こす可能性の高い疾患や早期の膵がんを検出することの有効性が評価され、既に検査キットも開発されている。2015年から膵がん検診研究を試行し、バイオマーカーの異常があった患者から、膵がんのリスク疾患や膵がんを発見できることを確認しているという。しかしながら、先行研究では血液バイオマーカー検査で陽性反応がみられても、その後の精密検査を受けられる人が少ないなど、バイオマーカーの有用性を科学的に証明するのに必要なデータを確保できていなかった。
血液検査と造影CT検査の結果から検出率を調査
今回の研究は、2017年7月から2019年3月まで、鹿児島県で行われる地域健康診断で実施される予定。目標登録数に到達次第終了するという。登録の目標は5,000人から1万0,000人。
1次スクリーニング検査として、検診で得た採血7mLを用いて、液中のApoA2アイソフォームの濃度バランスを計測。血液検査結果は被験者に知らせ、異常値がみられた被験者には、鹿児島大学、鹿児島市立病院、出水市総合医療センターのいずれかで、精密検査(2次検査)として造影CT検査を受けてもらう。これにより、血液検査陽性者(1次スクリーニング検査陽性者)から、どの程度の頻度で膵がんのリスク疾患や早期膵がんが見つかるのか、その検出率(陽性反応適中率)を調べるという。
今回、臨床研究の対象として、鹿児島県民総合保健センターが選ばれたのは、全国的に精密検査受診率が高く、検診体制が整っているためだが、今秋以降には鹿児島県以外にも、さらに拡大する予定としている。
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・国立がん研究センター プレスリリース