ヤンセン社とFDAとの協議により実施された統合解析プログラムの結果より
田辺三菱製薬株式会社は6月23日、同社のSGLT2阻害薬「カナグリフロジン」(製品名:カナグル)に関するメディアセミナーを開催。京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学の稲垣暢也教授が講演した。
今回のセミナーは、同剤の導出先である米ヤンセン・ファーマシューティカルズ社が行った大規模臨床試験「CANVAS Program」の主要結果が、第77回米国糖尿病学会(ADA 2017)で発表されたことを受け、開催されたもの。
CANVAS Programは、ヤンセン社とFDAとの協議により実施されたCANVAS/CANVAS-R試験の統合解析プログラムであり、2型糖尿病患者に対するカナグリフロジンの脳・心血管イベントに対する安全性評価を目的としている。対象は、HbA1c7.0~10.5%、eGFR30ml/min/1.73m2以上の2型糖尿病であり、脳・心血管疾患の既往がある30歳以上もしくは脳・心血管リスクを2つ以上もつ50歳以上の患者1万0,142人(CANVAS 4,330人、CANVAS-R 5,812人)。追跡期間は平均188週(3.6年)だった。
脳・心血管イベントに対する有効性は「クラスエフェクトであろう」(稲垣氏)
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学
稲垣暢也教授
解析の結果、カナグリフロジン投与群はプラセボ投与群に対し、脳・心血管への安全性および有効性を示し、主要評価項目の「脳・心血管死」「非致死性心筋梗塞」「非致死性脳卒中」を有意に減少させた(ハザード比:0.86(95%信頼区間:0.75-0.97)、p<0.0001(非劣性)、p=0.0158(優越性))。副次評価項目の総死亡は13%減少した(ハザード比:0.87(95%信頼区間:0.74-1.01))。
探索的評価項目のアルブミン尿の進展については、カナグリフロジン投与群がプラセボ群に比べて、27%抑制(ハザード比:0.73(95%信頼区間:0.67-0.79))。eGFR40%低下、腎代替療法の導入、腎死の腎複合エンドポイントでは、リスクを40%減少した(ハザード比:0.60(95%信頼区間:0.47-0.77))。
安全評価については、足趾を主とした下肢切断のリスクが約2倍に上昇した(ハザード比:1.97(95%信頼区間:1.41-2.75))が、リスク増加のメカニズムは不明だという。この結果について、稲垣氏は「下肢切断リスク増加との関連が認められたことから、カナグリフロジンを処方する際にはこのリスクを考慮すべき」と指摘。また、「日本では糖尿病足潰瘍・下肢切断は欧米に比べて低いが、下肢切断の既往がある人、末梢動脈疾患の人などは、注意が必要」とし、「予防のためのフットケアなどを行ってほしい」と述べた。
今回の結果により、SGLT2阻害薬としてはエンパグリフロジンに続き、脳・心血管イベントに対するベネフィットが確認された。これにより、「SGLT2阻害薬の脳・心血管イベントに対する有効性はクラスエフェクトであろう、という可能性が高まった」と稲垣氏。くわえて、透析患者が増え続けている日本の現状を踏まえ、「SGLT2阻害薬による効果が示唆されている腎保護の可能性については、さらなる検証を期待したい」と、稲垣氏は述べている。
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