日本をはじめアジアで多くみられる難治性のがん種
国立がん研究センターは6月23日、肝臓がんと胆道がんの遺伝子発現による分子タイプには地域を超え共通するタイプと、各地域や人種に特徴的なタイプが存在することを確認したと発表した。この研究は、同センター研究所がんゲノミクス研究分野の柴田龍弘分野長らが、米国国立がん研究所(NCI)とタイチュラボーン研究所と共同で行ったもの。研究成果は、米専門誌「Cancer Cell」オンライン版で公開されている。
画像はリリースより
肝臓がんと胆道がんは、日本をはじめアジアで多くみられる難治がん。これらのがんの発がん要因は、肝炎ウイルスや寄生虫感染、あるいは特徴的な化学物質(アフラトキシンB1)暴露などが解明されてきたが、詳細な分子プロファイルを用いた国際比較研究はこれまで行われていなかった。
日本人症例のみにみられるタイプ、予後良好などの特徴を同定
研究グループは、アジア地域および欧米での肝臓がんと胆道がん1,046症例の大規模な分子プロファイル(ゲノム・遺伝子発現・メタボローム)の国際比較研究を実施。胆道がんは5つ(C1、C2、ICC-C3、ICC-C4、ICC-UM)、肝臓がんでは4つのタイプ(C1、C2、HCC-C3、HCC-UM)に分類した。
その中のC1とC2タイプは、両がん種に共通しており、C1タイプは全ての人種に共通、C2タイプはアジア地域の症例でのみ明確に同定されたという。また、胆道がんは、日本人症例のみにみられるICC-UMタイプと、タイ症例のみにみられるICC-C4タイプを同定。ICC-UMタイプは、IDH1ならびにBAP1遺伝子変異が多く、他のタイプと比較すると予後良好などの特徴が見られたという。
今回の研究により、アジア地域の肝臓がん・胆道がんの類似性と欧米症例との多様性など地域・人種別の特徴の存在が明らかになった。研究グループは、アジアでの高頻度かつ難治であるこれらのがん種を標的とする臨床開発で、日本人症例を中心とするゲノム・発現データの集積は重要な役割を果たすと考えられる、と述べている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター プレスリリース