OTS顕微鏡を用い、機械学習により高精度検出
科学技術振興機構(JST)は6月23日、高速イメージング法であるOTS(Optofluidic Time-Stretch)顕微鏡を用いてマイクロ流路中を高速に流れる細胞を無標識で撮影し、機械学習によりヒト血液中の血小板凝集塊の高精度検出に成功したと発表した。この研究は、東京大学大学院理学系研究科化学専攻の姜逸越大学院生、雷诚特任助教、合田圭介教授、同大医学系研究科臨床病態検査医学分野の安本篤史助教、矢冨裕教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Lab on a Chip」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
世界保健機関(WHO)の調査によると、世界で毎年新たに約1000万例の血栓性疾患が診断されている。そのうちアテローム血栓症は、欧米、さらには日本における主な死亡原因のひとつとなっており、QOLを落とす重要な原因となっている。
アテローム血栓症は、動脈硬化部位で活性化し凝集した血小板が血栓を形成し、血管が詰まることによって引き起こされる。治療には、血小板の凝集を抑制する抗血小板薬が広く使用されている。
単一の血小板と白血球から高い特異性と感度で区別
今回の研究では、活性化して凝集塊を形成した血小板をヒト血液中から高速・高精度に検出する技術を確立。原理検証のために、健常者ヒト全血サンプルを調整し、試験管内で、血小板刺激物質のコラーゲンを添加して血小板凝集塊を作製。コラーゲンを加えていないサンプルを対照とし、密度勾配法を用いて赤血球を分離後、実験に用いた。
マイクロ流体チップを用いてサンプルを高速に流しOTS顕微鏡を用いて毎秒1万0,000細胞の高スループットで全細胞を撮影し、機械学習により短時間で形態学的に分類したところ、血小板凝集塊を単一の血小板と白血球から96.6%の高い特異性と感度で区別したという。
今回開発された技術では、従来の顕微鏡による観察に比べて非常に高速かつ無標識で血小板凝集塊を検出できる。そのため、これまでの研究で示されている各種疾患と血小板凝集塊との関連性をより詳しく調べることに役立ち、血栓性疾患の研究の進展に貢献すると期待され、将来的には診断や治療モニタリングなど臨床応用への展開も想定される、と研究グループは述べている。
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・科学技術振興機構(JST) プレスリリース