未解明な部分が多かったペリサイトの起源
富山大学は6月19日、血管内皮細胞と共に脳血管を構成するペリサイトが、血球系細胞の成熟したマクロファージ由来であることを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医学薬学研究部(医学)病態・病理学講座の山本助教、笹原教授らによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Scientific Report」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
ペリサイトは血管内皮細胞とともに血管を構成しており、成熟した安定な血管の構築には、ペリサイト由来の分子シグナルが血管内皮細胞に作用することが重要だといわれている。とくに、脳は血管周囲に存在するペリサイトが多い組織であり、安定で成熟した血管の存在が脳機能に不可欠と考えられている。しかし、ペリサイトの起源については未解明な部分が多かった。
腫瘍血管の新たな創薬ターゲットとして期待
研究グループは、マウス脳発生初期の、脳血管発生部位の観察を実施。その結果、ペリサイトが、血球系細胞である成熟したマクロファージ由来であることを突き止めたという。これまでペリサイトは間葉系細胞や神経堤細胞由来であると考えられてきたが、新たな細胞ソースが存在することが明らかとなった。また、機能的に成熟したマクロファージがペリサイトにtransdifferentiation(分化転換、全く異なる機能を有する細胞に変化)することが明らかとなり、定説を覆す新事実だという。
ペリサイトは血管再生医療分野では、安定な成熟血管を作成するために注目されており、さらに腫瘍血管の構成要素でもあるため、治療薬のターゲットとして重要視されている。今回の研究で明らかとなったマクロファージ由来ペリサイトが、それら分野の新たな創薬ターゲットとなると考えられる、と研究グループは述べている。
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