敗血症性ショックを引き起こすリポ多糖とIL-6の関係性
九州大学は6月20日、大腸菌の壁構成成分のリポ多糖(LPS)によって免疫細胞から産生される炎症性サイトカイン「インターロイキン6」(IL-6)の量が、ミトコンドリアの特定の機能により調節されていると発表した。この研究は、同大大学院医学研究院臨床検査医学分野の康東天教授、後藤和人助教と佐々木勝彦氏(民間等共同研究員、株式会社LSIメディエンス)らの研究グループが、九州大学とLSIメディエンスの組織対応型連携の枠組みにおいて共同で行ったもの。研究成果は、新規オープンアクセス誌「EBioMedicine」に公開されている。
画像はリリースより
敗血症は細菌などの血行性感染を発端として、細菌が産生する毒素が全身に広がり、組織障害や臓器障害を起こす重篤な病態。とくに大腸菌などのグラム陰性桿菌の細菌壁の構成成分のひとつであるLPSは、敗血症性ショックを引き起こす一因となる。これまで新規の臨床検査法や強力な抗生剤の開発がなされてきたが、LPSなどに伴う生体の過剰な免疫反応により起こる敗血症性ショックの加療は困難であった。
ミトコンドリアの機能保護剤やATF4の阻害剤が新たなターゲットに
敗血症予後は、ミトコンドリアの機能や血中のIL-6の量に相関することがこれまでの研究で示されていた。今回、研究グループは、ミトコンドリア機能を阻害する薬剤をスクリーニングして、ミトコンドリアタンパク質を合成する機能が大腸菌由来のLPSに対するIL-6の産生に影響を与えていることを解明した。
また、ミトコンドリアタンパク質の合成を制御する分子のひとつであるp32という遺伝子の部分欠失マウスを樹立。敗血症モデルでは、p32がIL-6の量と予後に影響を与えていることを見出したという。さらに、線維芽細胞やマクロファージなど細胞を用いて、さまざまな生体のストレスにより活性化する分子「ATF4」に依存的に、LPSに反応するIL-6の量が増加するというメカニズムを明らかにした。
これらの結果から、ミトコンドリアの特定の機能を保護することやATF4を阻害することが、重症な敗血症の新たな治療のターゲットになると考えられる。今後について研究グループは、研究をさらに推し進めて、新たな臨床検査法・創薬の開発などへとつなげて行きたい、と述べている。
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