社会問題となったグルパール19Sを含有した茶のしずく石鹸
藤田保健衛生大学は6月19日、「茶のしずく石鹸」などに含まれた加水分解コムギによるアレルギーに関する研究成果を発表した。この研究は、同大アレルギー疾患対策医療学講座の松永佳世子教授らが日本アレルギー学会の「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」にて実施したもの。研究成果は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
グルパール19Sを含有した茶のしずく石鹸は、2004年3月~2010年12月まで、約4650万個が、約467万人に販売された。これは、日本人の成人女性の12人に1人が使用したことになる。2009年の秋の日本アレルギー学会で、同該石鹸を使っているうちに小麦を食べるとショックになるという重篤なアレルギーを発症した例が国内ではじめて報告されて以来、症例は増え続け、大きな社会問題となった。厚生労働省は、2010年10月に消費者に対し、加水分解コムギを使った石鹸全般に対する注意を発表し、メーカーは2011年5月に自主回収を開始した。
日本アレルギー学会では、同事例に対応するため、「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」を設置し、診断基準の策定、検査法の構築、発症機序の解明、障害実態の把握、症例集積方法の確立などを実施し、診療可能施設一覧などの情報提供も行ってきた。
症例の25%がアナフィラキシーショックを経験
今回発表されたのは、障害実態把握のための疫学調査結果。2012年4月から2014年10月まで行い、全国270の医療施設を受診した2,111例の確実例がいることを明らかにした。性別は、女性が2,025例、男性が86例、年齢は、最年少が1歳、最年長が93歳で、平均は45.8±14.5歳だった。いずれの症例も、同該石鹸を使用する前に、小麦アレルギーの明らかな既往はなかった。
詳細な症状が確認できた899例の調査結果から、症例の25%がアナフィラキシーショックを経験、43%が呼吸困難を経験していることもわかった。これらは、経皮および/または経粘膜曝露により、体内に加水分解コムギに対する特異的IgEが産生し、摂取した小麦タンパク質と交差反応したことで、アナフィラキシー等のアレルギー反応を引き起こしたと考えられるという。
この調査結果により、同該石鹸を使用したことによって、新たに小麦アレルギーを発症し、多くの人が生命のリスクにさらされた実態が把握できた。特別委員会は2015年5月末日で解散したが、同疾患の疫学調査は、日本医療研究開発機構(AMED)の「医薬部外品及び化粧品配合成分の安全性確保のための規格等に関する研究」として継続される予定。
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