加齢に伴う咀嚼機能低下とそれに伴う脳機能低下が問題に
東京医科歯科大学は6月13日、成長期における咀嚼刺激の低下が記憶を司る海馬の神経細胞に変化をもたらし、記憶・学習機能障害を引き起こすと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野の中島友紀教授らと、神戸大学医学研究科システム生理学分野の和氣弘明教授との共同研究によるもの。研究成果は、国際科学誌「Journal of Dental Research」オンライン版で発表された。
画像はリリースより
現在、全世界で高齢化が進行しており、加齢に伴う咀嚼機能の低下とそれに伴う脳機能の低下が問題となっている。しかし、咀嚼機能と高次脳機能の関係には、未解明な点が多く残されており、記憶・学習機能など脳機能の障害を予防するためには、咀嚼機能と脳機能がどのように関係しているのか、そのメカニズムの解明が課題となっていた。
神経活動やシナプス形成、BDNFの発現が低下
研究グループは、マウスに離乳期から成長期にかけて粉末飼料を与え、咀嚼刺激を低下させるモデルの解析を実施。その結果、粉末飼料を与えたマウスでは、通常の固形飼料を与えた対照群のマウスと比べ、顎顔面の骨や噛むための筋肉の成長が抑制され、記憶・学習機能も顕著に障害されることが見出されたという。
そこで、記憶・学習を司る脳領域である海馬を解析したところ、神経活動やシナプス形成、脳由来神経栄養因子 (BDNF)の発現が低下し、神経細胞が減少していることが明らかになった。これらの結果から、成長期に咀嚼刺激が低下すると、顎骨や咀嚼筋の成長と記憶・学習機能が障害される可能性が示唆されたとしている。
この研究成果は、記憶・学習機能障害や認知症の予防に、咀嚼機能の維持・強化が有効であることを示唆している。今後、ヒトを対象とした研究を含め咀嚼機能と脳機能を結びつける分子メカニズムがさらに詳細に解明されれば、認知症や記憶・学習機能障害の新たな治療法・予防法の確立につながると期待される。
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