近年、重要性が注目されている非アポトーシス細胞死
東京医科歯科大学は6月13日、オートファジー細胞死の生体での役割をつきとめたと発表した。この研究は、同大難治疾患研究の荒川講師、清水教授らの研究グループが、大阪国際がんセンター・研究所の辻本研究所長らの研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Cell Death & Differentiation」オンライン版で発表されている。
画像はリリースより
細胞死は大別して、アポトーシスと非アポトーシス細胞死に分けられる。アポトーシスは個体発生や生体の恒常性維持に関わる非常に重要な機構だ。しかし、研究が進むにつれて、非アポトーシス細胞死の重要性に注目が集まってきた。
非アポトーシス細胞死の中では、とくにオートファジー細胞死やネクロープトーシスが、重要な細胞死であることがわかっている。今回の研究では、オートファジー細胞死が、生体内で実際に起こっているのか、いつ、どこで起こっているのか、ということを明らかにすることを目的に、オートファジー細胞死が起こらないマウスを作製して、その表現型を解析したという。
アポトーシスもオートファジー細胞死も起きないマウスで高頻度の脳奇形
研究グループは、オートファジー細胞死がマウスの生体内でも起きるのかを調べるために、正常マウス(WT)、アポトーシスが起きないBax/Bak2重欠損(DKO)マウス、アポトーシスもオートファジー細胞死も起きないAtg5/Bax/Bak3重欠損(TKO)を作成した。
通常、マウスの指の形成は指と指の間にある水かき細胞のアポトーシスによって、胎仔期の13.5日目におこる。今回作成したDKOマウスでは、アポトーシス不全によって指の形成が遅れるが、1日後には指が形成され、水かき細胞でオートファジー細胞死が観察されたという。また、TKOマウスでは、アポトーシス不全とオートファジー細胞死不全によってさらに指の形成が遅れたという。これらの結果により、指の形成においてオートファジー細胞死がアポトーシスを代償している事が判明した。
また、胎仔期の脳ではアポトーシスが盛んに起こるが、アポトーシス不全マウスにおいても、脳の形成にはほとんど異常がみられず、何らかの代替機構の存在が予測されていた。そして今回、TKOマウスを作成してみると、高頻度で脳の奇形が生じることが判明。すなわち、DKOマウスでは、オートファジー細胞死がアポトーシスを代替することによって正常な脳形成が行なわれているものと考えるとしている。
非アポトーシス細胞死は、現在世界的に注目されている研究テーマであり、その生理的役割を示した報告はこれまでなかった。今回の研究成果について、研究グループは「非アポトーシス細胞死の生体での役割を明確に示した初めての論文となります」と述べている。
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