日韓で07~12年に登録された910例を対象に解析
京都大学は6月9日、乳がんの手術前に化学療法を行い、手術後にカペシタビンを投与すると、治療後の生存期間が延びることを確認したと発表した。この研究は、同大医学研究科の戸井雅和教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The New England Journal Medicine」に6月1日付けで掲載されている。
研究グループは、ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陰性乳がん患者を解析。手術後に行う標準的な化学療法にカペシタビンを追加する群(カペシタビン群)と追加しない群(対照群)に無作為に分け、治療後の無病生存期間や全生存期間を評価対象として2群間を比較した。カペシタビン群と対照群の年齢層は25~74歳。日本と韓国の医療機関で2007~2012年の間に登録された910例を対象とした。
トリプルネガティブ乳がん患者も予後が改善
最終解析の結果、無病生存期間はカペシタビン群が対照群よりも長いことがわかった。治療後5年の時点で、カペシタビン群では74.1%に再発や他の病気が見られなかったのに対し、対照群では67.6%にとどまった。全生存期間も、カペシタビン群では治療後5年の時点で89.2%が生存していたのに対し、対照群では83.6%という結果になったという。
また、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性のトリプルネガティブ乳がん患者にも、カペシタビン追加の意義が観察され、治療後5年の時点での無病生存率では、カペシタビン群が69.8%に対し、対照群は56.1%。全生存率では、カペシタビン群が78.8%に対し、対照群は70.3%という結果となり、予後の改善が認められた。副作用に関しては、カペシタビンに関連する最も頻度の高い有害事象の手足症候群が、73.4%の症例で現れたという。
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・京都大学 研究成果