47疾患の罹患者約20万人のデータを分析
東京大学は6月12日、バイオバンク・ジャパン(BBJ)に2003~2007年度までに登録された47疾患の罹患者19万9,982名の登録初年度データを分析し、登録者の全体像や疾患毎の臨床像を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医科学研究所の平田真特任助教と同大大学院新領域創成科学研究科の松田浩一教授、理化学研究所、九州大学、北海道大学、山梨大学の研究グループによるもの。研究成果は14の論文にまとめられ、「Journal of Epidemiology」に掲載された。
画像はリリースより
「よくある病気」を対象としたオーダーメイド医療を実現するためのゲノム医学研究・基盤整備の推進を目指す「オーダーメイド医療の実現プログラム」は、第1期(2003~2007年度)に12協力医療機関65施設で47疾患の罹患者約20万人について、研究参加者のDNA・血清試料や臨床情報を収集し、BBJを構築した。
今回発表された論文では、BBJの研究デザインの詳細や、第1期に登録された研究参加者約20万人の登録初年度の臨床情報から明らかになった参加者の全体像、疾患毎の臨床像について報告。さらに、追跡調査から得られた32疾患の罹患者の予後に関する情報のデータと臨床情報のデータを突合して解析を行い、生存期間や生存率等を示した。
32疾患では追跡調査を実施
臨床情報について横断的分析を行った論文では、性別、登録時年齢、体格、高血圧、喫煙・飲酒状況についてBBJの全登録者を用いた解析を行い、BBJ登録47疾患の特性を解明。各疾患の性別と年齢について、BBJ登録者の分布と厚生労働省の患者調査の分布が同様の傾向であり、BBJ登録者の性別と年齢に偏りが少ないことが示された。喫煙歴については、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、食道がん、間質性肺炎、膵がん、心筋梗塞で、他疾患や国民健康・栄養調査と比べて、喫煙歴がある人の割合が高い結果となった。飲酒歴については、男女ともに、特に食道がんにおいて、他疾患や国民健康栄養調査と比べて、飲酒歴がある人の割合が高く、食道がんと飲酒が関連していることが考えられるという。
また、32疾患の罹患者の予後について追跡調査を実施し、追跡率97%、平均追跡期間7.7年のデータを収集。その結果、追跡対象者全体の5年実測生存率は85.5%、5年相対生存率は94.4%、10年相対生存率は91.1%で、疾患を有する人は一般集団と比べ生存率が低いことが判明した。さらに疾患横断的に解析を行った結果、膵がんの登録者の生存率が最も低く、次いで胆嚢・胆管がん、肝がんにおいて予後が悪いこと、脂質異常症の予後が良いことが明らかとなった。
今後、BBJの保有する研究資源の利活用を促進することにより、多くの研究者から遺伝要因と疾患や薬剤応答性などの相互作用に関する重要な知見が提供され、個別化医療の実現に貢献することが期待される、と研究グループは述べている。
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