■今年度に3品目程度予定
国立成育医療研究センターは今年度、小児用剤形の開発に弾みをつけるため、「製剤ラボ」で剤形の試験製造をスタートさせる方針を決めた。小児薬の剤形開発に向けては、既に昨年から小児用製剤1品目の医師主導治験が始まっているが、採算性の問題から製薬企業の支援が得られにくく、治験につながるケースは少ないのが現状。そのため同センターでは、医療現場に必要な小児用剤形について、施設主導で独自に製剤ラボにおいて散剤やタブレットの試作品を製造し、崩壊性や安定性等のデータを企業に提供してマッチングにつなげたい考え。今年度に3品目程度の試験製造を手がける予定。
小児向けの医薬品は、製薬企業の採算に合わないことから治験が進まず、未だに散剤やシロップ剤、タブレットなど子供に適した剤形の開発は遅れているのが現状だ。こうした状況を打破しようと、同センターでは小児用製剤ラボを設置。全国の小児病院のニーズをもとに新たな剤形の治験薬を製造し、製薬企業に導出する取り組みに乗り出した。
既に昨年から同センターで小児用製剤1品目の医師主導治験がスタートした。製薬企業との共同研究はもちろんのことだが、医療機関の製剤ラボで治験薬を製造し、病院で治験を実施する施設完結型の製剤企画は画期的な試みだ。医師主導治験は製造販売承認を目的とした「治験」であるため、薬事申請から製品化までの道筋についても医療施設の全面的な協力が得られる。
ただ、依然として製薬企業側は、臨床現場のニーズやデータの取得方法、剤形の選択方法が分からないため、小児用製剤の開発に着手しにくい現状もあった。同センターも製剤ラボを稼働させたものの、継続して治験を希望する製薬企業の支援がなければ、小児剤形の開発は進みにくいと危機感を持っていた。
そこで今年度から、製薬企業に実際の開発に向けた状況を理解してもらうため、同センターで医療現場が必要としている小児用剤形を試験製造する方針を決めた。製剤ラボで剤形を試験製造し、崩壊性や安定性等のデータを提供するだけでなく、臨床試験に向けた情報も提供したい考え。
同センターは3月、富山県、富山県薬業連合会等と小児薬の開発促進に向けた連携協定を結んだ。剤形開発に道筋をつけるため、製剤ラボで製造した試作品の開発について、後発品メーカーをはじめ、特徴ある製剤技術を保有する富山県の企業にも広く協力を求めていきたい考え。
石川洋一薬剤部長は「実際の散剤や錠剤、タブレットという形で製剤モデルを作って具体化し、製薬企業に示していきたい」と協力を呼びかけている。