新潟薬科大学が長野県上田市に計画している「長野薬学部(仮称)」の開設をめぐり、長野県が財政支援の条件としている「県内医療関係3団体の賛同」が得られなかったことが分かった。長野県の阿部守一知事は今月2日の定例記者会見で、薬学部設置計画について、「薬剤師会、医師会、歯科医師会に、県として考えを聞いた」ところ、「現時点では賛成しかねるという意向だと聞いている」と語った。大学側から要請されている財政支援を見送るかどうかについて明言してはいないが、県からの支援が得られなければ、計画は「断念」か「凍結」かを余儀なくされそうだ。最終的な判断は、今月28日の理事会で決定する予定だが、大学関係者は「早ければ来週中に方針を固めるかもしれない」と話している。
新潟薬大は、薬学部設置に必要なコストを最大80億円と試算し、長野県と上田市にそれぞれ25億円の援助を要請している。
長野県は、財政支援を行うに当たり、県内の医師会、歯科医師会、薬剤師会から理解を得ることが欠かせないとしていたが、長野県薬は、4月に開いた理事会で薬学部設置計画に賛成しないことを決定していた。
県内医療関係3団体の理解が得られなければ、県からの財政支援を得ることは難しくなるため、大学側を後押ししていた上田市は県に対し、3団体の意向を確認するよう要請。
長野県が5月に薬剤師会、医師会、歯科医師会に、薬学部設置に関する聞き取りを行った結果、地方の私立薬科大学で定員割れが相次いでいることなど、「複数の不安要素があり、慎重にならざるを得ない」(長野県薬)との理由から、各団体とも計画に「賛成しかねる」との考えを示したようだ。
阿部知事は2日の会見で、3団体の意向は、「上田市の方にも伝達している」ことを明らかにしているが、上田市の政策企画部政策企画課は、3団体が反対の意向を示したからといって、「県として財政支援しないことを明言したわけではない」としつつも「厳しい状況だ」とコメント。今後は、3団体の意向を議会や市内の関係者に説明した上で、「判断していきたい」とした。
新潟薬大は以前から、薬学部設置について、「財政支援がなければあきらめざるを得ない」との考えを示している。今月28日の理事会で最終決定する予定だが、市は今週中に新潟薬大を訪れ、状況を説明することになっており、大学関係者によると、「早ければ来週中に方針を固めるかもしれない」という。