検尿では異常が見られないものの、突然腎機能が低下する間質尿細管腎炎
大阪大学は6月2日、1型髄質嚢胞腎(MCKD1)について、新しい遺伝子異常部位を明かし、この異常遺伝子から生じる異常タンパク質の性質を初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の山本聡子大学院生、貝森淳哉寄附講座准教授、猪阪善隆教授ら研究グループによるもの。研究成果は、欧州腎臓学会誌「Nephrology Dialysis Transplantation」に公開されている。
画像はリリースより
MCKD1は家族性の間質尿細管腎炎のひとつ。通常、腎臓の機能低下は、タンパク尿や血尿がサインとなって表れるが、MCKD1は検尿での異常が見られないにも関わらず突然腎機能が低下する。2013年には、ムチン1タンパク質をコードする遺伝子「MUC1」が原因遺伝子であることが報告されていた。しかし、MUC1遺伝子の異常は、グアニン・シトシン(GC)を多く含んだ、個人によって数の異なる繰り返し配列(VNTR)に、シトシンが1塩基のみ挿入されるというもので、従来の手法では遺伝子解析が困難だった。
患者の尿から異常MUC1タンパク質を検出
研究グループは、患者から提供された遺伝子について、次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析を実施。その結果、MUC1遺伝子において、VNTRより上流にあるアデニン・グアニン(AG)が欠失していることを突き止めたという。これは、これまでに報告されていた「VNTR中の遺伝子欠失」とは異なる新たな遺伝子異常部位の報告だ。また、患者のMUC1の遺伝子異常配列を培養遠位尿細管細胞に発現させたところ、正常なMUC1タンパク質は細胞膜に存在するのに対し、異常MUC1タンパク質は細胞質に存在することが判明。エクソソーム抽出とウエスタン・ブロット解析により、患者の尿から異常MUC1タンパク質が検出できることを確認したという。
今回の研究成果によって、遺伝子解析で診断できるMCKD1が存在することが明らかになった。今後、MUC1遺伝子異常配列や異常タンパク質について研究を進め、同疾患の仕組みが明らかになることが期待される、と研究グループは述べている。
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