高尿酸血症は腎機能障害、低尿酸血症は血管内皮障害の原因に
大阪市立大学は6月1日、血清尿酸値が正常範囲内でも腎臓への血流や機能が低下することを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学研究科代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学の上殿英記大学院生、津田昌宏講師、石村栄治特任教授らのグループによるもの。研究成果は、米生理学会誌「American Journal of Physiology-Renal Physiology」電子版に同日付けで掲載されている。
画像はリリースより
高尿酸血症は、痛風を引き起こすだけでなく、高血圧症、糖尿病、動脈硬化症などの生活習慣病や腎機能障害と関連するといわる。また、低尿酸血症では急性腎不全が引き起こされることや、血管内皮障害を引き起こすことが知られている。その原因は、尿酸値の上昇や低下に伴い、過酸化ラジカルや酸化ストレスが増加することで微細動脈の血管障害が引き起こされるためと考えられているが、解明されていない部分も多く、ヒトの腎臓で微細血管障害がみられるのかは、わかっていなかった。
より狭い範囲内で尿酸値を正常に保つことが重要
研究グループは、腎機能と尿酸の関連について検討を実施。腎移植ドナー候補者は48名。蛋白尿陰性、糸球体濾過率(GFR)が60ml/min/1.73m2以上、腎機能が正常で高尿酸血症やその他の生活習慣病のない健康な人で、移植ドナーとなりうるかどうか、腎臓の精密な機能精査を受けるために同学附属病院に入院した人を対象とした。
腎臓の機能・血流量は、イヌリンクリアランス(Cin)・パラアミノ馬尿酸クリアランス(Cpah)で評価。輸入細動脈を含む微細動脈の血管抵抗値は、この方法で測定したCin、Cpah、血圧と血中の総タンパク濃度を計算式(Gomezの式)で計算し、腎臓の微細動脈の抵抗値を計算した。
その結果、尿酸は正常値の範囲内であっても、軽度の高値あるいは軽度の低値の状態であれば腎臓の微細動脈の血管抵抗値を上昇させ、腎機能の低下と関連することが判明。また、尿酸値が正常値より低い場合でも、腎機能や腎血流が低下することもわかったという。これらの成果は、これまで想定されていた血清尿酸値の範囲内(高尿酸血症7.0mg/dL以上、低尿酸血症2.0mg/dL以下)ではなく、より狭い範囲内で尿酸値を正常に保つことが、腎臓を保護するうえで重要だということを明らかにした。
研究グループは現在、尿酸低下薬の薬物治療を行うことにより、腎臓の機能や微細動脈血管抵抗値がどのように変化するかを研究中。適正に尿酸値コントロールを行うことで、腎不全などの腎臓病や尿酸値に起因した生活習慣病が予防できるようになることを目標に、研究を進めていきたいとしている。
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