65歳未満では、認知症の40%以上を占める筆頭原因
京都大学は6月1日、小血管性認知症の患者では、脳の血管内で骨形成タンパク質4(bone morphogenetic protein 4:BMP4)という分子が、通常よりも多く発現していることを発見したと発表した。この研究は、同大医学研究科の上村麻衣子特定研究員、眞木崇州助教、梶誠兒博士課程学生らの研究グループによるもの。研究成果は、国際神経病理学会の学術誌「Brain Pathology」に同日付けで掲載されている。
画像はリリースより
脳卒中や脳の循環不全が原因となって起こる血管性認知症は、全体の患者数の約20%を占め、アルツハイマー病に次いで2番目に多い認知症であり、65歳未満の現役世代では、認知症の40%以上を占める筆頭原因だ。また、アルツハイマー病の病態を悪化させる因子としても知られている。
孤発性の小血管性認知症では、高血圧や糖尿病などによる細い血管の動脈硬化によって血流が滞る。これにより、慢性低灌流に弱いという脳内の白質が障害され、認知機能の低下につながる。これまでは、生活習慣の改善やリスク因子の管理、血流改善の薬などによる予防的なアプローチしかなかった。
BMP4の作用を抑える薬で脳の障害を改善
今回、研究グループは、小血管性認知症の患者7名(男性4名、女性3名)と、同年代で認知症ではないコントロール群6名(男女各3名)の脳内を解析し、脳の血管内でBMP4が、通常よりも多く発現していることを発見。また、細胞実験と動物実験を行い、脳に届く血液の量が減少すると、脳血管の細胞からBMP4が多く分泌され、脳の障害および認知機能の低下につながる可能性があることを見出した。さらに、脳の血液量を減少させたマウスに、BMP4の作用を抑える薬を投与すると、この脳の障害を改善させることができたという。
今回の研究は、慢性低灌流後の白質障害が起こるメカニズムに迫ったものであり、これまで予防的なアプローチしかなかった小血管性認知症に対する、初期段階での治療介入の可能性が生じたという点において意義深い、研究グループは述べている。BMP4の抑制作用が認められている薬の中には、ヒトへの安全性が確認されているものもあるため、血管性認知症の治療に使えるよう、研究を続けていく予定だという。
▼関連リンク
・京都大学 研究成果