血液中IL-6濃度が健常者と比較して高いうつ病患者
千葉大学は5月31日、うつ病の新しい治療法として、炎症性サイトカインのインターロイキン6(IL-6)受容体の阻害が有効であると発表した。この研究は、同大社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授(神経科学)、張継春特任助教(現:中国)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Translational Psychiatry」に5月30日付で掲載されている。
うつ病の薬物療法として、抗うつ薬などが使用されているが、既存の抗うつ薬が効かない治療抵抗性の患者も約30%存在する。ストレスなどの要因がうつ病の発症に関わっていることが知られているが、その発症の詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。
IL-6とは、T細胞やマクロファージ等の細胞から産生される炎症性サイトカインのひとつ。これまでの多くの研究から、うつ病患者の血液中のIL-6濃度が、健常者と比較して高いことが報告されており、うつ病の炎症仮説が提唱されている。
関節リウマチ治療薬のIL-6受容体抗体に期待
今回、研究グループは、うつ病のモデル動物を用いて研究を実施。IL-6シグナルを阻害する方法として、IL-6受容体抗体をマウスに静脈投与すると、即効性の抗うつ効果を示し、また、うつ症状を示すマウス脳内における樹状突起スパイン密度の減少も改善した。一方、脳室内投与では、抗うつ効果を示さなかったという。
さらに、IL-6受容体抗体は、うつ症状を示すマウスの腸内細菌叢の変化を改善することも判明。これらの知見は、末梢におけるIL-6受容体の阻害が、脳腸連関を介して、抗うつ作用に関わっている可能性を示唆しているという。
今回の研究成果は、近年提唱されているうつ病の炎症仮説を支持するもの。また、IL-6受容体抗体は、関節リウマチの治療薬としてすでに世界中で使用されているため、血液中IL-6濃度の高い治療抵抗性うつ病患者の新しい治療薬として期待できるとしている。
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・千葉大学 ニュースリリース