記念式典であいさつした新田大会長は、地域包括ケアシステムを深化させるために連合会を結成したことを説明。在宅医療における患者の生活支援、国民が満足する医療提供体制の構築、在宅医療の標準化を課題に挙げ、「これから医療と福祉が合体していく中で、国民の意思に応えていかなければならない。在宅医療の良い部分、悪い部分を含めてきちんと標準化し、国民目線でわれわれの体制作りが求められる」と述べた。
塩崎恭久厚生労働相(松本洋平内閣府副大臣が代読)は祝辞で、「地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題。在宅医療は大きな構成要素の一つで、これまでの治す医療から支える医療が求められる中、それぞれの役割に応じて多職種で連携することが重要。今後とも一つひとつの課題に真摯に向き合い、着実に取り組んでいきたい」と述べ、協力を呼びかけた。
日本薬剤師会の山本信夫会長は、「薬剤師は医師、歯科医師、さらに多職種の方々と連携を取ることで、地域における医薬品の安心と安全を守ることが基本的な仕事」と指摘。地域包括ケアの中で薬剤師に求められる役割は大きいとし、「三師会が集結した会議がそれぞれの役割を果たしていただく第一歩となることを願っている」と連合会の活動に期待を語った。
■在宅医療、継続性も課題-薬剤師は「モノ」検討を
●連合会シンポ
連合会のシンポジウムでは、鈴木内科医院.東京都)の鈴木央氏が、かかりつけ医療の本質として、長期にわたる継続性、同じ地域住民としての近接性、患者のために親身に働く責任性、協調性などを挙げ、これらの結果として深い信頼関係が築かれることを説明。その上で、かかりつけ医が行う在宅医療を「最も自然な流れの中で展開される」としつつ、1人の医師が24時間365日体制で完全に対応することは難しいと指摘。かかりつけ医同士の連携やチームでの対応の重要性を訴えた。
鈴木氏は、都市部の高齢化のピークが遅れることが予想され、医療を行うかかりつけ医自身も高齢化することから、「地域により多く分担し、リスクを回避する必要がある」と指摘。次の世代を育成する必要性を訴え、在宅医療の継続性も課題に挙げた。
全国薬剤師・在宅療養支援連絡会副会長の金井秀樹氏は、薬局における在宅訪問薬剤管理指導の実施件数が急増する中、在宅に薬剤師が関与したことで有害事象や服薬状況が改善した成果を示す一方、実際の薬局業務において「薬学部で学んだ知識が生かされていない」と指摘した。
薬を渡す調剤中心の対物業務から対人業務への転換が求められる中、薬剤師が得意な薬理学、薬剤学、製剤学の知識を生かし、「ヒトの先に、さらに服用した薬が体内でどう作用するかという“モノ”の部分を考えていかなければならない」と提言した。
金井氏は「薬剤師の特性はモノ」と改めて強調。「対物業務から対人業務へといわれているが、やはり対人業務のために、もう一度、薬剤師の特性であるモノをきちんと把握する中で、より多職種に薬剤師の業務が見えるようにしていかなければならない」と語った。