バイエル薬品は26日、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)「イグザレルト」の服用症例のうち、12例の副作用を厚生労働省に報告していなかったと発表した。同社の営業社員が患者に無断でカルテを閲覧していた問題について、外部専門家を交えて調査を行った過程で判明した。これを受け厚労省は29日、同社に対して医薬品医療機器法に基づき報告命令を出した。全品目を対象に副作用の報告漏れなどがないか調査し、その原因について7月31日までに報告するよう求めた。
調査は2012年と13年、血栓症領域製剤の服薬患者を対象に、剤形や服薬回数など「服薬に関する嗜好」を聞き取ったもの。その過程で同社の営業社員が無断でカルテを閲覧、データを収集していた。調査票に選択肢として設けられた「鼻血や皮下出血が起こりやすい」「胃腸の症状が起こる(痛い、熱い、むかむかするなど)」「湿疹など皮膚症状がでる」との回答や、自由記載で回答された事項の一部を副作用として報告していなかった。
本来、副作用の疑いのある症例データは同社の安全管理部門に集約し、同部門で必要性などを分析した上で当局に報告する必要がある。同社は詳しい過程を明らかにしていないが、意図的に副作用を隠蔽したのではなく、副作用報告の対象に調査が該当しないと認識していたため、副作用報告を怠ったものと見られる。
同社は、厚労省からの報告命令について「真摯に受け止め、指示に従いながら結果を報告すべく、しっかりと調査を進めたい」としている。12例の副作用報告については「製品の安全性プロファイルに影響を及ぼすものではない」(同社安全管理部門)という。