ATS 2017で新たな解析結果を発表
独ベーリンガーインゲルハイム社は5月24日、米国胸部学会2017年度年次会議(ATS 2017)で、特発性肺線維症(IPF)患者での「オフェブ(R)」(一般名:ニンテダニブ)の使用時の新たな解析結果を発表した。今回の発表の要約は、オフェブの既存の有効性と安全性に関するデータを裏付け、IPF患者の呼吸機能に対する有効性について追加的な知見を示すものだという。
オフェブは、肺の希少疾患であるIPFを適応に承認されており、肺線維症の発現機序への関与が示唆されている増殖因子受容体を標的とする。線維化過程に関与するシグナル伝達経路を遮断することで、呼吸機能の低下を抑制し、IPFの疾患進行を遅らせると考えられている。モデル動物を用いた試験では、オフェブの抗線維化作用が、肺線維化を伴う肺疾患の原因によらないことが示されている。
努力性肺活量の年間減少率が96週にわたって同程度に
INPULSIS試験は、IPFを対象にニンテダニブの有効性と安全性を評価した第3相国際試験。投与量、選択基準、評価項目といった試験デザインが同一のINPULSIS-1とINPULSIS-2の2つの試験で構成されている。疾患早期の患者(%FVC>90%)、高分解能CT(HRCT)で蜂巣肺が認められない患者、肺気腫を合併している患者など、日常診療でみられるさまざまなタイプの患者が登録された。52週間の治験薬投与期間と4週間の追跡調査期間を完了した患者は、ニンテダニブの長期安全性と忍容性を評価する、非盲検継続投与試験への参加が可能。このINPULSIS-ON(Clinicaltrial.gov trial identifier: NCT01619085)試験には734人の患者が参加し、試験は現在進行中。
今回の発表されたのは、第3相INPULSIS(R)試験の2試験併合データ。52週間の努力性肺活量(FVC)を比較したところ、オフェブが投与された患者では、呼吸機能が改善する、または低下しない割合が、プラセボが投与された患者の約2倍になることが示された(オフェブ36.8%vs.プラセボ18.0%)。また、非盲検IMPULSIS(R)-ON試験のサブグループ解析では、個々の忍容性に基づいて投与された用量(150mg1日2回、100mg1日2回、またはその両方)によらず、オフェブを投与された患者で96週にわたりFVCの年間減少率が同程度であることが示されたとしている。新たな治療選択肢の登場は、臨床的なベネフィットをもたらすものとして注目されている。