プロトコルの運用には大阪回生病院、淀川区薬剤師会、会員薬局の3者間で確認書を交わす必要がある。運用上の責任は薬局が負うことを明確にした。現在、淀川区薬剤師会の会員約80薬局のうち約30薬局が確認書を締結。同院の院外処方箋を応需する薬局はほぼ全て確認書を交わしている。
同院への疑義照会は、医師に直接、電話で行っている。医師の同意を得ているとしてプロトコルに沿って医師への事前の問い合わせを省略した場合、薬局薬剤師はその内容を同院薬剤部にFAXで送信する。その件数は現在、1日数件から10件ほど。「患者の希望によって規格を変更した」との報告が多いという。
淀川区で取り組みが始まったきっかけは、大阪回生病院の近隣薬局の薬剤師が大阪鉄道病院(大阪市阿倍野区)の薬薬連携会議に参加し、同院が昨年4月から開始した疑義照会簡素化の取り組みを知ったことだ。患者の待ち時間短縮、医師の業務負担軽減、薬局薬剤師の本来業務への集中化が実現するとして、プロトコルのたたき台を淀川区薬剤師会が作成。大阪回生病院に投げかけて合意に至った。
淀川区薬剤師会副会長の廣田憲威氏(大阪ファルマプラン理事長)は「各地で取り組みが進む中、病院個別の疑義照会簡素化プロトコルが増えてくると、病院ごとの個別対応が求められるため、受け手側の薬局にとって大変なことになる。地域共通の普遍的なものが必要と考えて今回のプロトコルを作成した」と振り返る。
プロトコルは薬局薬剤師の目線で作成された。保険調剤上のルールを把握した上で、簡素化可能な事項を、[1]銘柄や規格、剤形の変更[2]処方日数の減少[3]用法・用量の調整――の三つに整理し、シンプルな形式で記載した。
「既存のものと内容的には大きな違いはないが、薬局薬剤師にとって理解しやすく、汎用性があり、現場で判断しやすい表現にした。簡素化可能な多数の項目が羅列されていても覚えきれない。ジャンル別に記載し、すっきりした形にした。その上で簡素化できないことを明記した」と廣田氏は語る。
同一主成分が含有されている全ての銘柄間の変更が可能だ。剤形変更は基本的に内用薬に限定。処方日数の減少は、残薬を確認した場合に行える。漢方薬の食後服用など、薬事承認されていない「用法・用量」は、合理性があると薬剤師が判断できる場合に限り、疑義照会を簡素化し処方箋通りに調剤できる。
麻薬や抗がん剤、抗凝固薬など治療上重要性の高い薬剤の残薬調整で処方日数を減らすことや、外用薬の剤形変更などは「疑義照会を簡素化できない事項」として明記している。
今後、このプロトコルを淀川区内の他の基幹病院にも広めたい考えだ。西淀川区、東淀川区、北区の各薬剤師会での活用を促すと共に今年夏以降、西淀病院、千船病院、大阪市立十三市民病院、淀川キリスト教病院に趣旨を説明し、理解を得たいという。大阪鉄道病院でも次回改定時にはこの表現方法を全面的に取り入れる意向を示しており、地域共通プロトコルとしての認知が進みそうだ。
こうした動きのほかに、大阪市天王寺区では昨年11月から、五つの基幹病院と同区内の薬局が共通のプロトコルで疑義照会を簡素化する取り組みが始まっている。各地域単位で共通化が進むにつれて将来は、より広い地域での共通プロトコルの策定が注目を集めることになりそうだ。