Regnase-1が鉄代謝において果たす役割に着目
京都大学は5月24日、腸で鉄の吸収を調節するメカニズムの一端を解明する研究結果を発表した。この研究は、同大ウイルス・再生医科学研究所の竹内理教授らと、大阪大学、東京大学、兵庫医科大学らの共同研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Cell Reports」に同日付けで掲載されている。
画像はリリースより
生物の体内での鉄の量は、さまざまな仕組みにより厳密に調節されており、鉄が不足すると貧血が、過剰になると臓器が機能不全を起こすヘモクロマトーシスといった疾患の原因となる。これまで、この鉄代謝を制御する機構のひとつとして、関連する遺伝子のmRNAの安定性を調節する機構の重要性が知られていたが、鉄代謝にかかわるmRNAの分解を促進する機構は、未解明な部分が多かったという。
研究グループはこれまでの研究で、RNA分解酵素分子「Regnase-1」を発見。この分子が炎症関連遺伝子のmRNAを分解することで免疫機能を抑制していることを報告していた。また、この研究の過程においてRegnase-1欠損マウスが、炎症性疾患に加え、重度の貧血を発症することを見出していたという。しかし、Regnase-1欠損マウスにおいて貧血がどのようにして起こるのかは明らかになっていなかった。そこで今回、Regnase-1が鉄代謝において果たす役割に着目した。
Regnase-1がトランスフェリン受容体とPHD3のmRNAを分解
研究の結果、鉄代謝にかかわるタンパク質のなかでトランスフェリン受容体とPHD3のmRNAを、Regnase-1が分解することが解明した。また、Regnase-1はPHD3のmRNAを分解することで、腸での鉄吸収において重要な転写因子であるHIF2αを安定化させ、腸管での鉄吸収を促進する役割があることが判明。さらに、Regnase-1自身がHIF2αの標的遺伝子であり、Regnase-1、PHD3、HIF2αの三者からなる正のフィードバック機構が腸管での鉄吸収を調節していることを発見したという。
今回の研究により、Regnase-1が腸管での鉄吸収にとって重要な因子であることを解明された。今後、ヒトの貧血や鉄代謝異常でのRegnase-1の役割を検討することで、疾患のさらなる病態解明に発展することが期待され、Regnase-1の活性を調節することで、これらの疾患の治療につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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・京都大学 プレスリリース