聖マリアンナ医科大学病院は、科学的根拠に経済性を踏まえて、後発品の積極使用を推進する「フォーミュラリー」の運用により、2016年度の院内薬剤購入費を前年度比で約2000万円削減した。G-CSF製剤「フィルグラスチム」の先行品からバイオシミラーへの切り替えで約1480万円、経口プロトンポンプ阻害剤(PPI)でも第1選択薬とする「オメプラゾール」「ランソプラゾール」などの後発品の使用推奨で約550万円削減した。新薬の採用を制限し、標準薬物治療の基準薬として後発品を考慮に入れたフォミューラリーを作成し、17年4月時点での院内の後発品数量割合が90%以上に到達したという。
同病院では、06年から後発品が市販されれば、速やかに先発品から切り替える取り組みを開始した。14年4月には既存の同種同効薬の採用がある場合は、後発品などの安価な薬剤を優先し、有効性や安全性に明らかな差がない場合は新薬の採用を認めない「フォーミュラリー」を作成した。
ACE阻害薬・ARB、スタチン、グリニド系糖尿病薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、プロトンポンプ阻害薬(注射薬、経口薬)、G-CSF製剤の九つの薬効群でフォーミュラリーを作成し、院内使用での第1選択薬、第2選択薬などの基準を決定。フォーミュラリー作成後の成果として、14年度に前年度比で825万円、15年度に137万円の院内購入費を削減した。
16年度は、高薬価のバイオ医薬品をバイオシミラーに切り替えることで、購入費の大幅削減に導いた。日本癌治療学会のG-CSF適正使用ガイドラインでバイオシミラーが推奨グレードCからBに引き上げられ、「先行バイオ医薬品と同様に使用して良い」との方針が示されたことから、バイオシミラーへの切り替えを決めた。
既にG-CSF製剤では、五つのバイオシミラーが上市される中、海外第III相無作為化比較試験とメタ解析のデータを持つフィルグラスチムBS注「テバ」と同「NK」のエビデンスレベルが高いと評価し、第1選択薬に採用。1年間で約1480万円を削減した。
PPIについても当初は、新薬のタケキャブを医師が使用する状況があったものの、薬剤部から第1選択の後発品を診療科医師に提案したところ、タケキャブの使用量が前年よりも減り、550万円削減した。3年間で合計3160万円の薬剤購入費を削減したことになる。
同病院薬剤部の上田彩氏は、薬剤費適正化に向けては病棟薬剤師からの処方提案が大きいとし、「医薬品情報室との連携や、診療科医師と臨床的な議論をするための準備が必要」とした一方、「処方医へのフォーミュラリーの浸透が課題で、医学部や研修医への教育と周知活動を行うべき」とした。