選択的バソプレシンV2-受容体阻害剤
大塚製薬株式会社は5月22日、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)を対象とした「トルバプタン(一般名)」の有効性・安全性を検討する、追加フェーズ3臨床試験の結果を公表。主要評価項目と副次的評価項目いずれも達成したと発表した。この試験結果は、今年後半に行われる腎臓病関連学会で発表される予定。
トルバプタンは、同社が創製した選択的バソプレシンV2-受容体阻害剤。ナトリウムなどの電解質の排泄に影響を与えず、体内の余分な水のみを出すメカニズムを有する水利尿薬だ。日本国内においては「サムスカ」の製品名で、2010年10月に「他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」、2013年9月に「他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」の効能・効果で承認を取得している。
また、水利尿作用とは別に、バソプレシンV2-受容体を介したcAMP産生の抑制により、常染色体優性多発性のう腎(ADPKD)の腎のう胞の増殖・増大を抑制することから、2014年3月に「ADPKDの進行抑制」の効能・効果で、世界で初めて承認を取得している。
米国での新薬承認申請を目的とした追加のP3試験
今回の試験は、トルバプタンのADPKD治療薬としての米国における新薬承認申請(NDA)を目的としたもの。同剤未治療のADPKD患者1,370名を対象に行われた、多施設、二重盲検、ランダム化プラセボ対照、国際共同試験である。同剤投与に忍容性を示した患者を、同剤またはプラセボ投与群に割り付け、12か月間投与したときの有効性と安全性について検討した。
その結果、主要評価項目である、腎機能の指標となる「eGFR(推算糸球体濾過量)」のベースラインから投与終了後フォローアップまでの変化量を比較したところ、同剤投与群はプラセボ投与群に比べ、有意にeGFRの低下を抑制した(p<0.0001)。また、副次的評価項目である投与期間中の「eGFR変化(スロープの傾き)」においても有意な差が認められたという(p<0.0001)。副作用として、下痢、疲労感、多尿、肝機能異常等がみられたが、同試験で新たに確認された安全性上の問題は認められなかった。
同社は、2013年8月にFDAから審査完了通知(CRL)を受理後、再申請のための追加試験を実施していた。今回の試験結果に基づき、FDAと申請に向けた協議を行う予定としている。
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・大塚製薬株式会社 ニュースリリース