■使用促進へ国民に周知必要
医薬品の適正使用期間が短い疾患領域については、医療機関を受診し院外で医療用医薬品をもらうより、同じ成分のOTC医薬品を購入して対処する方が自己負担費用を安く抑えられる場合があることが、明治薬科大学社会薬学教授の古澤康秀氏らの調査で明らかになった。OTC薬の使用促進のために、その事実を国民に周知することが求められるという。一方、適正使用期間が長い領域ではOTC薬の方が自己負担費用は高くなる傾向が強く、製薬企業の努力や国の支援が必要としている。
古澤氏らは、現在販売されているOTC薬のうち、単味剤であり、同成分の医療用医薬品が存在する25領域148品目を抽出し、調査を実施した。OTC薬の添付文書に「○日服用しても症状の改善が見られなかった場合は医師、薬剤師に相談してください」などと記載された期間を、適正使用期間に設定。適正使用期間を満たす最小包装単位の希望小売価格を、OTC薬の自己負担費用として算出した。
医療用医薬品については、適正使用期間における同成分の先発品の薬価を算出。その上で医療機関の初診料、処方箋料、薬局の調剤基本料、薬剤管理料、調剤料、薬剤料など最低限必要な医療費を算出して加え、その合計額の3割を自己負担費用とした。
この計算式に沿ってOTC薬と医療用医薬品の自己負担費用をそれぞれ算出し、領域ごとに平均化して比較したところ、25領域のうち12領域ではOTC薬の方が安価で、13領域ではOTC薬の方が高価だった。
品目数で比較すると、OTC薬の方が安価な品目が多かった領域は、便秘(15品目中13品目)、解熱鎮痛(13品中12品目)、殺菌消毒(6品目中6品目)、口内炎(5品目中5品目)、胃痛鎮痙(3品目中3品目)、にきび(2品目中2品目)――などだった。
一方、医療用医薬品の方が安価な品目が多かった領域は、消炎鎮痛(35品目中22品目)、膣カンジダ(9品目中8品目)、胃痛(8品目中7品目)、アレルギー(7品目中6品目)、アレルギー性鼻炎(6品目中5品目)、水虫(5品目中5品目)、頻尿(4品目中4品目)、禁煙補助(4品目中4品目)、中性脂肪(1品目中1品目)――などだった。
薬の自己負担費用だけで比較すると、OTC薬に比べて医療用医薬品の費用の方が全般的に安価だが、そこに医療費を加えた場合、適正使用期間が短い領域ではその影響を大きく受けるため、OTC薬の方が安価になることが多くなることが分かった。
一方、適正使用期間が長くなるとその影響は小さくなるため、医療用医薬品の自己負担費用の方が安価になった。このほか、膣カンジダ治療薬、頻尿改善薬、水虫治療薬など受診に抵抗がある領域については、OTC薬の価格は高めに設定される傾向が強かったという。
これらの結果から古澤氏らは、OTC薬の使用促進には、OTC薬を購入して対処する方が安価な場合があることを国民に知ってもらったり、製薬会社の企業努力によって価格を引き下げたり、政策面での支援を得たりする必要があるとしている。