ROS1阻害作用を有する分子標的薬
ファイザー株式会社は5月18日、メルクセローノ株式会社とコ・プロモーションを行っている抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリ(R)カプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ)に関し、新たな適応症として「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」の追加承認を取得したと発表した。
ROS1遺伝子と別の遺伝子が融合しROS1再構成が生じると、各遺伝子の機能が正常に働かず、がん細胞の成長を促進するがんドライバーとなる。また、疫学データより、NSCLCのおよそ1%にROS1再構成が認められることが示されており、日本では、肺がんの総患者数が13.8万人であることから、推定患者数は1,400名程度と考えられている。
ザーコリは、ファイザー社が開発した分子標的薬。作用機序としてROS1阻害作用を有しており、ROS1融合蛋白のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内のシグナル伝達を遮断する。
日本初の「ROS1融合遺伝子陽性NSCLC」治療薬に
今回の適応拡大承認は、承認事項一部変更申請として、2016年8月31日に行っていたもの。申請は、ROS1融合遺伝子陽性NSCLCを対象とした、海外第1相試験と日本を含むアジア共同第2相試験で同剤の有効性と安全性を評価し、その結果を取りまとめて行った。
同剤は、日本で「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応症で2012年3月に承認を取得。米国では、「FDAが承認した検査法でALK陽性と診断された局所進行または転移性NSCLC」を適応症として2011年8月に承認されている。欧州では、「前治療歴を有するALK陽性進行NSCLC成人患者」を適応症として2012年10月に承認を取得。2015年11月には、「初回治療のALK陽性進行NSCLC成人患者」に適応拡大が承認された。
今回同剤は、日本で初めて「ROS1融合遺伝子陽性NSCLC」の治療薬として承認されたことになる。同社は今後、治療選択肢が限られている希少肺がんの患者に、遺伝子検査・診断に基づく治療の重要性の啓発や、適正使用情報の提供に引き続き努めていきたいとしている。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース