高い選択性を有するプロテアソーム阻害剤
小野薬品工業株式会社は5月18日、プロテアソーム阻害剤「カイプロリス(R)点滴静注用10mg、同40mg」(一般名:カルフィルゾミブ)について、再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する用法・用量追加の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表した。
多発性骨髄腫は、骨髄中にある形質細胞の異常により引き起こされる血液がん。日本国内の総患者数は約1万8,000人と報告されている。現在、多発性骨髄腫に対する治療法は複数存在するものの、寛解と再発を繰り返し進行する、もしくはどの治療法も有効でなくなる難治性の病状に移行する場合も少なくない。また、長期的な治療では副作用や合併症が報告されており、多発性骨髄腫に対する新たな治療薬の開発が期待されている。
カイプロリスは、小野薬品が米Onyx Pharmaceuticals Inc(現Amgen社)から 2010年9月に導入した高い選択性を有するプロテアソーム阻害剤。プロテアソームは細胞内に存在する酵素複合体であり、ポリユビキチン化されたタンパクを分解する作用を有する。これにより、細胞の増殖、分化および機能的細胞死を制御する。カイプロリスはこのプロテアソームを阻害することで、骨髄腫細胞の機能的細胞死を誘導する。
国際P3試験におけるPFS の中間解析結果で優越性を検証
同剤は、2016年7月に再発又は難治性の多発性骨髄腫を効能・効果として、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用において、1サイクル目の1及び2日目のみ20mg/m2、それ以降は27mg/m2を10分かけて点滴静注を用法・用量として承認を取得している。 今回の追加承認によりデキサメタゾンとの併用において、1サイクル目の1及び2日目のみ20mg/m2、それ以降は56mg/m2を30分かけて点滴静注の用法・用量が追加された。
今回の追加承認は、カイプロリスおよびデキサメタゾン併用療法(Kd)とボルテゾミブおよびデキサメタゾン併用療法(Bd)を比較した、国際共同第3相試験の結果に基づくもの。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、 PFSの中間解析の結果、Bd群の9.4か月に対し、Kd群は18.7か月と、Bd群に対するKd群の優越性が検証された(ハザード比0.533、p<0.0001)。Kd群において20%以上に発現した有害事象は、貧血、下痢、疲労、呼吸困難、発熱、不眠症、咳嗽、高血圧、末梢性浮腫、血小板減少症、 無力症、上気道感染だったという。
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・小野薬品工業株式会社 プレスリリース