医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 肥満細胞の寄生虫感染防御に対する新たな機能を発見-理研ら

肥満細胞の寄生虫感染防御に対する新たな機能を発見-理研ら

読了時間:約 1分25秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年05月19日 PM01:30

免疫反応などの生体防御に重要な役割を担う肥満細胞

理化学研究所は5月17日、寄生虫感染防御に対する肥満細胞の新たな機能を発見したことを発表した。この研究は、理研統合生命医科学研究センター粘膜システム研究グループの下川周子客員研究員(群馬大学大学院医学系研究科助教)と大野博司グループディレクターら共同研究グループによるもの。研究成果は「Immunity」オンライン版に5月16日付けで掲載されている。


画像はリリースより

マスト細胞とも呼ばれる肥満細胞は、中身の詰まった顆粒を多数有していることを特徴とする。哺乳類の粘膜下組織などに存在し、免疫反応などの生体防御に重要な役割を果たしている。

ヒトの体は、細菌やウイルスに対しては1型ヘルパーT細胞を主体とする「1型免疫応答」を誘導するのに対し、腸管寄生線虫と呼ばれる寄生虫に対しては、2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球を主体とする「2型免疫応答」を誘導する。この2型免疫応答では肥満細胞が活躍するが、そのメカニズムや2型自然リンパ球(ILC2)との関連についてはわかっていなかった。

肥満細胞がIL-33を産生、ILC2を活性化

研究グループは、遺伝的に肥満細胞が野生型よりも多いマウスを作製し、肥満細胞の寄生虫に対する感染防御メカニズムを調査。その結果、このマウスが腸管寄生線虫に強い抵抗力を持つことや、感染時にはILC2が増えることを発見した。

ILC2は感染初期の寄生虫感染に対する防御を担う自然免疫系の細胞であり、その活性化にはインターロイキン-33(IL-33)が必要となる。肥満細胞が多いマウスでは、寄生虫感染により生じる腸管上皮細胞の損傷に伴い放出されるアデノシン三リン酸(ATP)に反応して、活性化された肥満細胞がIL-33を産生することでILC2を活性化していることがわかったという。これらの結果は、「寄生虫に対する自然免疫の発動を担う」という肥満細胞の新たな機能を明確に示すものだという。

肥満細胞とILC2は寄生虫への生体防御に貢献する一方で、アレルギーや炎症性疾患の原因にもなっている。今回の研究成果をもとに、肥満細胞に端を発する2型免疫応答の誘導を抑制できれば、それら難治性疾患の新たな予防法や治療法の開発につながることが期待できる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大