免疫反応などの生体防御に重要な役割を担う肥満細胞
理化学研究所は5月17日、寄生虫感染防御に対する肥満細胞の新たな機能を発見したことを発表した。この研究は、理研統合生命医科学研究センター粘膜システム研究グループの下川周子客員研究員(群馬大学大学院医学系研究科助教)と大野博司グループディレクターら共同研究グループによるもの。研究成果は「Immunity」オンライン版に5月16日付けで掲載されている。
画像はリリースより
マスト細胞とも呼ばれる肥満細胞は、中身の詰まった顆粒を多数有していることを特徴とする。哺乳類の粘膜下組織などに存在し、免疫反応などの生体防御に重要な役割を果たしている。
ヒトの体は、細菌やウイルスに対しては1型ヘルパーT細胞を主体とする「1型免疫応答」を誘導するのに対し、腸管寄生線虫と呼ばれる寄生虫に対しては、2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球を主体とする「2型免疫応答」を誘導する。この2型免疫応答では肥満細胞が活躍するが、そのメカニズムや2型自然リンパ球(ILC2)との関連についてはわかっていなかった。
肥満細胞がIL-33を産生、ILC2を活性化
研究グループは、遺伝的に肥満細胞が野生型よりも多いマウスを作製し、肥満細胞の寄生虫に対する感染防御メカニズムを調査。その結果、このマウスが腸管寄生線虫に強い抵抗力を持つことや、感染時にはILC2が増えることを発見した。
ILC2は感染初期の寄生虫感染に対する防御を担う自然免疫系の細胞であり、その活性化にはインターロイキン-33(IL-33)が必要となる。肥満細胞が多いマウスでは、寄生虫感染により生じる腸管上皮細胞の損傷に伴い放出されるアデノシン三リン酸(ATP)に反応して、活性化された肥満細胞がIL-33を産生することでILC2を活性化していることがわかったという。これらの結果は、「寄生虫に対する自然免疫の発動を担う」という肥満細胞の新たな機能を明確に示すものだという。
肥満細胞とILC2は寄生虫への生体防御に貢献する一方で、アレルギーや炎症性疾患の原因にもなっている。今回の研究成果をもとに、肥満細胞に端を発する2型免疫応答の誘導を抑制できれば、それら難治性疾患の新たな予防法や治療法の開発につながることが期待できる、と研究グループは述べている。
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・理化学研究所 プレスリリース