PD-L1を直接標的とするヒトモノクローナル抗体
英アストラゼネカ社は5月12日、白金製剤をもちいた根治的同時化学放射線療法の後に進行が認められなかった切除不可能な局所進行性(ステージ3)非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした、デュルバルマブ逐次投与の第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験であるPACIFIC試験の結果を発表。規定の中間解析で、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意かつ臨床的に有意義な延長を達成したという。
ステージ3の肺がんは、NSCLCの罹患件数の約3分の1を占めており、2016年にはG7諸国において約10万人が罹患したと推定される。患者の約半数の腫瘍は切除不能だという。予後は依然として不良であり、長期生存率は低い。
デュルバルマブ(米国での製品名「Imfinzi」)は、PD-L1を直接標的とするヒトモノクローナル抗体。T細胞上のPD-1とCD80とのPD-L1の相互作用を阻害し、腫瘍の免疫からの逃避機構が働かないよう作用し、免疫反応を誘導する。
トレメリムマブなど他の新規治験薬との併用試験の検討も
PACIFIC試験は、米国、カナダ、ヨーロッパ、中南米、日本、韓国、台湾、南アフリ、オーストラリアを含む26か国の235施設で実施中。同試験の主要評価項目はPFSと全生存期間(OS)であり、副次的評価項目にはランドマークPFSとOS、客観的奏効率、奏効期間が含まれる。OSについてもプロトコールにより規定されているスケジュールに則り評価するという。アストラゼネカは今後、医学学会においてPACIFIC試験の結果を発表する予定としている。
デュルバルマブは、先般米国食品医薬品局(FDA)より既治療進行膀胱がん患者の治療薬として迅速承認を取得している。また、デュルバルマブ単剤療法は、第3相MYSTIC・PEARL試験でNSCLC患者の1次治療として検討されている。また、複数の単剤療法試験やトレメリムマブなど他の新規治験薬との併用試験での検討が進められている。なお、デュルバルマブおよびトレメリムマブは、現時点では日本国内未承認。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース