■第一三共が国内トップに
国内製薬大手4社の2017年3月期決算が出揃った。円高による海外売上減と国内薬価改定の影響で4社が揃って減収となったが、為替影響を除く実質ベースでは全社が増収だった。利益面は円高がプラスに寄与し、第一三共を除き営業増益を達成した。第一三共は主力の降圧剤「オルメサルタン(一般名)」の米国特許切れに直面し、減収二桁減益で着地した一方、国内売上では長らく首位を守っていた武田薬品を僅差で逆転。18年3月期は、アステラス製薬が降圧剤「ミカルディス」、武田が多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」の特許切れを迎え、さらに厳しい年度となりそうだ。
武田は、実質ベースで6.9%増、医療用医薬品に限ると7.3%増と計画を上振れした。潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」が6割増とブロックバスター製品に成長し、同社のトップ製品となった。ベルケイドが15%減と落ち込んだが、高血圧症治療薬「アジルバ」が13%増、多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」は約7倍とカバーした。
全ての地域で実質的な成長を達成した。米国は為替影響を入れても1%増を確保した。日本では、武田テバ薬品への長期収載品事業譲渡により6%減収。海外医療用医薬品売上比率は67.8%と前年より0.7ポイント上昇した。
アステラスは減収となったが、レオファーマへの皮膚科事業売却と為替影響を除けば実質で2%増収となった。主力の前立腺癌治療薬「エンザルタミド(一般名)」が米国外で伸長するも、米国では患者支援プログラムによる価格低下で二桁減と売上は前年とほぼ横ばいで伸び悩んだ。過活動膀胱(OAB)フランチャイズでも「ミラベグロン(一般名)」が2割増と勢いを持続するも、「ベシケア」が全地域で売上を落とし、14%減とOAB全体で1%減だった。国内は薬価改定の影響から6%減、海外売上比率は63%台と前期並みだった。
第一三共は、売上の約3分の1を占めるオルメサルタンの米国物質特許が昨年秋に満了し、前期から売上が2割減に沈み、3%減収となった。しかし特殊要因を除くと1%台の増収で着地している。経口抗凝固薬「エドキサバン」は日本で倍増、欧州で6倍増と伸び、前期比で約2.5倍に拡大した。
国内は抗潰瘍薬「ネキシウム」や抗アルツハイマー病(AD)薬「メマリー」などの新薬群が好調で薬価改定影響を跳ね返し、増収を確保。ワクチンと医療用医薬品では5066億円と武田を約19億円差でかわし、医療薬で念願の国内トップ企業に躍り出た。一方、米国では17%減、現地通貨ベースでも8%減と苦戦を強いられた。
エーザイは、数量ベースでは世界全地域で伸長するも、1%台の減収、医薬品事業のみでは横ばいだった。中枢神経系領域は抗AD薬「アリセプト」が22%減で約2%減となった一方、癌領域では抗癌剤「レンビマ」が87%増と牽引し前期並みだった。国内は2%増、医療用医薬品では4%増だった。北米・中南米は4%減、中国は横ばいとなった。
利益面では、武田が武田テバからの長期収載品事業譲渡益で1029億円を加え、2割近くの営業増益。アステラスは皮膚科事業譲渡益で4%の営業増益、12%の最終利益となり、エーザイもEAファーマ株式取得に伴う一時収益計上で営業・経常で二桁増益を達成した。第一三共はワクチン事業の減損損失で30%台の減益となった。
18年3月期は、アステラスが減収減益、武田は減収となるも和光純薬工業の売却益などで二桁増益を見込む。第一三共はオルメサルタンの売上減が本格化するが、前期の減損損失がなくなり減収二桁増益を予想。エーザイは増収営業微増益を計画する。