PD-L1を標的としたモノクローナル抗体
中外製薬株式会社は5月10日、改変型抗PD-L1モノクローナル抗体「アテゾリズマブ」のプラチナ製剤併用の化学療法施行中または施行後に増悪した、局所進行または転移性尿路上皮がんを対象とした第3相臨床試験であるIMvigor211試験において、主要評価項目である全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長が認められなかったことを発表した。
アテゾリズマブは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に発現するPD-L1(programmed death ligand-1)を標的としたモノクローナル抗体。PD-L1は、T細胞の表面上に見られるPD-1、B7.1の双方と結合しT細胞の働きを阻害する。アテゾリズマブはこの結合を阻害することで、T細胞の抑制状態を解除させ、そのT細胞が腫瘍細胞を攻撃することを促進させる。
同剤は、米国食品医薬品局(FDA)により承認されており、「Tecentriq(R)」として販売されている。2016年5月に局所進行または転移性尿路上皮がんの2次治療、同年10月にプラチナ製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢が進行した転移性非小細胞肺がんに対し、迅速承認された。また、2017年4月にシスプラチンベースの化学療法が不適格な局所進行または転移性尿路上皮がんの一次治療に対しても、迅速承認されている。国内では、2017年2月に切除不能な進行・再発の非小細胞がんについて、厚生労働省に承認申請を行っている。
化学療法群の成績が当初の想定よりも良好に
今回、結果が発表されたIMvigor211試験は、プラチナ製剤併用の化学療法施行中または施行後に増悪した局所進行または転移性尿路上皮がんの患者を対象に、アテゾリズマブの有効性と安全性を化学療法(vinflunineまたはパクリタキセル、ドセタキセル)と比較検討した、オープンラベルランダム化多施設共同第3相臨床試験。931名の患者が登録され、3週間毎にvinflunine(320mg/m2静注)/パクリタキセル(175mg/m2静注)/ドセタキセル(75mg/m2静注)のいずれかの化学療法またはアテゾリズマブ(1,200mg静注)を投与される群に1:1でランダム化された。アテゾリズマブでの治療は、患者が臨床的ベネフィットを享受していると治験担当医師が評価している限り、または許容不能な有害事象が認められるまで継続されたという。
また、同試験におけるアテゾリズマブの安全性プロファイルはこれまでの臨床試験で認められたものと同様だったという。なお、有効性についてはアテゾリズマブ群の成績はIMvigor210試験と同様であったものの、化学療法群の成績が当初の想定よりも良好だった。試験の詳細については、今後公開される予定だとしている。
今回の結果を受けて同社は、今後の開発計画について検討するため、試験成績の詳細を把握すべく、ロシュ社と協議していきたいと述べている。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース