PD-L1を直接標的とするヒトモノクローナル抗体
英アストラゼネカ社とそのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューン社は5月1日、米国食品医薬品局(FDA)がデュルバルマブ(Imfinzi)に対して迅速承認を付与したことを発表した。
同剤は、プラチナ製剤を含む全身1次化学療法による治療中あるいは治療後に病勢進行が認められた、あるいはプラチナ製剤を含む術前、もしくは術後補助化学療法を受けてから12か月以内に病勢進行が認められた局所進行あるいは転移尿路上皮がん(mUC)患者の治療を適応としている。なお、同剤はFDAの迅速承認制度のもと、奏効率と奏効の持続可能性に基づき承認されたため、適応に関する継続承認は、確認試験における臨床的ベネフィットの検証およびその種類を条件としている。
同剤は、PD-L1を直接標的とするヒトモノクローナル抗体。PD-1およびCD80とのPD-L1の相互作用を阻害する。今回の承認における推奨用量は、病勢進行または受容できない毒性発現までの間、2週間毎に60分間にわたり体重1kgあたり10mgの静脈投与となる。
トレメリムマブとの併用を検討する第3相試験も実施中
FDAによる今回の迅速承認は、局所進行あるいは転移膀胱尿路上皮がん患者に、デュルバルマブの安全性および有効性を評価した第1/2相試験である「Study 1108試験」データに基づくもの。被験者は、術前、もしくは術後補助化学療法を受けてから12か月以内に病勢が進行した患者を含む、プラチナ製剤を含む化学療法による治療中あるいは治療後に病勢が進行した患者だった。
同試験において、デュルバルマブは迅速かつ持続的な奏効を示した。PD-L1発現状況にかかわらず、客観的奏効率(ORR)は全評価可能症例において17.0%(95%CI:11.9;23.3)、およびPD-L1高発現腫瘍を持つ症例(Ventana Medical Systems Inc.のVENTANA PD-L1(SP263)Assayにより判定)においては、26.3%(95%CI:17.8; 36.4)だった。PD-L1高発現の定義は、腫瘍領域に1%超の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)が存在する場合は腫瘍細胞(TC)またはICの細胞膜でのPD-L1発現割合が25%以上とし、腫瘍領域に1%未満のICしか存在しない場合にはTCの25%以上またはICの100%発現とした。
さらに、全評価可能症例の約14.3%が部分奏効を、約2.7%が完全奏効を達成。試験への登録前に術前、もしくは術後補助化学療法のみを受けた症例のうち24%(9症例)が奏功したという。同単群試験の副次的評価項目に基づき、奏効までの期間の中央値は6週間。全奏効症例31例のうち、14例(45%)では6か月以上奏効が持続し、5例(16%)では12か月以上奏効が持続したという。
現在、デュルバルマブは切除不能および転移膀胱がん患者の1次治療として、単剤療法およびCTLA-4を標的とするチェックポイント阻害剤「トレメリムマブ」との併用においても、国際共同第3相試験「DANUBE試験」にて検討され、2017年第1四半期に最後の被験者への投与を開始したという(中国を除く)。また、同剤を単剤療法あるいは併用療法で、複数の固形がんおよび血液がんにおいて検討するさらなる臨床試験が実施中。なお、デュルバルマブとトレメリムマブは、現時点において日本国内においては未承認である。
▼関連リンク
・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース