■不正受け決断、代替施設へ
東京理科大学薬学部は、8日から始まった2017年度の薬局実務実習で、大手チェーン薬局のクオールに実習施設が決まっていた学生の派遣を辞退した。保険調剤に関する診療報酬の付け替え請求を行っていた不正行為の発覚を受けた措置で、薬学教育の観点から学生を派遣することは不適切と判断した。クオールで実習予定だった学生については、同じ地域の代替薬局を確保している。実務実習を担当する薬物治療学教室の青山隆夫教授は、「教育現場からも厳しい視線で見られていることを理解してほしい」と話している。
17年度の実務実習日程は、第I期が今月8日から7月23日、第II期が9月4日から11月19日、第III期が来年1月9日から3月26日と決まっている。東京理科大薬学部でも95人の実習を予定しており、そのうち薬局実習でクオールに派遣する学生は第I期3人、第II期2人の計5人が決まっていた。
ただ、4月にクオールの薬局で診療報酬の付け替え請求を行っていた事実が発覚。大学内部から、学生を派遣する実務実習先の薬局チェーンで不正行為が行われていたことを問題視する声が噴出した。
こうした事態を受け、学内の実務実習委員会が実習先の変更を提案。千葉県薬剤師会、埼玉県薬剤師会に同じ地区の他の薬局で実習できるよう調整を依頼し、協力を取り付けた上で、薬学部長の了解を得て実務実習で予定していた5人の学生についてクオールへの派遣を辞退することを決めた。直近の第I期実務実習に向けては、4月26日に代替薬局を確保した。
実務実習を担当する青山教授は、「国民の健康を守る医療提供施設であり、将来学生が働いて患者のために活躍する薬局という場で不正が行われていたことは大きな問題。大学では診療報酬の授業も行っており、不正を行った企業が経営する薬局に派遣するのは学生に対して申し開きができない」と辞退した理由を語る。
一方、「第I期の実務実習まで時間があまりなかったが、東京理科大は定員が少ないために、小回りが効いた部分もあるかもしれない」と話している。
クオールの薬局で実務実習を行う予定だった学生は5人。そのうち第I期の3人については、地元の千葉県薬、埼玉県薬の協力、調整によって、同じ地区の他の薬局で実習を開始できることが決まった。第II期の2人についても1人は実習の代替薬局が確定しているが、1人は未定という。
開始直前の実習先の変更は、学生に与える影響も少なくないが、青山教授は「現時点で実習を途中で中止したわけでもなく、実習先の薬局と場所が変わるだけということもあり、理解してもらえた」と話している。
実習辞退を伝えられたクオール薬局の反応については、「個々の薬局では仕方がないと理解してくれた」という。実習先の中には、指導薬剤師が東京理科大OBの薬局もあり、「今回初めて東京理科大の学生を受け入れることを楽しみにしていた」と残念がる声もあったようだ。
青山教授も「多くの薬局の現場では一生懸命仕事をしていて、学生もしっかり指導しようと思っている薬剤師ばかりだと思う」としつつ、「大学としては薬学教育の観点からも、不正をした企業の薬局に学生を実務実習に送り出すのは問題」と述べ、教育面からの対応が大きいことも強調している。