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統合失調症に対する抗精神病薬の長期的使用、安全性・有用性・課題点を検証-慶大

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2017年05月10日 PM01:30

統合失調症の治療に50年以上使用される抗精神病薬

慶應義塾大学は5月8日、統合失調症の治療で使用される抗精神病薬の長期的な効果と、その安全性・有用性・課題点を明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同大学医学部精神・神経科学教室の内田裕之専任講師と、北米、ヨーロッパ、アジアの統合失調症研究の専門家によって行われたもの。これらの研究成果は、アメリカ精神医学会が発行する「American Journal of Psychiatry」に5月5日付で掲載されている。

統合失調症の症状は、脳の中の一部で、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が増えることによって現れると考えられている。治療にはドーパミンの機能を抑える薬として抗精神病薬が使われている。

これまで50年以上にわたり、統合失調症の治療に使用されてきた抗精神病薬だが、近年、長期使用により統合失調症の症状が逆に悪化するという報告が散見され、その使用の妥当性が議論になっている。そこで、研究グループは、抗精神病薬の治療効果や、脳に対する影響に関する過去の報告を吟味し、その有用性と安全性を再検証したという。

テーラーメイド治療実現のためにさらなる研究が必要

研究グループは、抗精神病薬の治療効果、脳に対する影響に関する、過去のメタ解析や体系的レビューといったエビデンスレベルの高い報告を中心に吟味し、その有用性と安全性を再検証。その結果、抗精神病薬の使用は症状を改善し、その後の再発を防ぐのに有用であることを改めて明確にしたという。

しかしながら、一部の患者では、抗精神病薬を中止もしくは減らすことが適切である可能性があり、今後、各患者にあった治療法である「テーラーメイド治療」を実現するための研究が必要であると考えられるとしている。また、抗精神病薬の使用が脳に与える影響は、人間と動物では、必ずしも結果が一致せず、薬の影響と病気の影響を区別することも困難なため、 抗精神病薬が脳の萎縮に与える影響は確定的な知見は得られなかったことから、さらなる調査が必要であることが示されたという。

今回の研究結果について、研究グループは、統合失調症の患者とその家族に対して、抗精神病薬の効果への“誤解”を解くと同時に、課題点も明らかになり、統合失調症の治療と研究の今後の方向性に寄与するものと考えられる、と述べている。

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