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条件付き早期承認「大きなテーマ」-RMPの定着も重要課題

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2017年05月08日 AM11:00

日本製薬工業協会の医薬品評価委員会、薬事委員会、品質委員会は4月25日、それぞれ総会を開催した。医薬品評価委員会の国忠聡委員長は、総会後の記者会見で、夏頃までに何らかの形で運用方法をまとめる予定の新薬開発での条件付き早期承認制度について、「早期承認に向けた対応は大きなテーマ。運用方法がまとまる夏頃までに対応を急ぐ必要がある」と述べ、委員会横断的に対応していく考えを示した。

会見する委員会メンバー

今年度の実施計画の重点課題は、▽医療データベースを活用した医薬品開発▽開発コスト低減に向けた開発の効率化▽(リスクマネジメントプラン:RMP)の定着▽臨床研究法やICH-GCPの刷新、条件付き早期承認――の四つ。中でも条件付き承認制度は、既にヒトの細胞を用いる再生医療等製品や医療機器で、治験データで有効性が推定され、安全性が確認されている場合に早期承認に道を開く制度の導入が決まっており、医薬品でも導入に向けて夏頃までに運用方法をまとめる予定となっている。

国忠氏は、「具体的なところがまだ決まっていないが、夏までに業界団体としてインプットし、検討していきたい。委員会横断的に対応しないといけない」と語った。

4月7日に参議院本会議で成立し、臨床研究の実施手続きや製薬企業から受けた資金提供について契約締結や公表を義務づける臨床研究法も大きな課題に挙げた。「われわれとしても大変歓迎している。医療機関の方々と協力していくためにも法案が役に立ち、医療機関での臨床試験のレベルが上がっていく。業界団体としてどう利活用していくか一致した考え方を出していきたい」と語った。

RMPに関しては、日本病院薬剤師会の安全管理責任者向けに全国14カ所で講演を行い、医療現場での利活用推進に向けた活動を進めてきた。病院薬剤師へのアプローチが中心だが、日本薬剤師会と協力し、薬局薬剤師向けにe-ラーニングで資材提供も行っている。RMPに対する理解を広げ、万が一調剤薬局で有害事象を見つけた場合には、迅速に報告へとつなげる仕組みをつくっていく。

一方、患者の声を取り入れた医薬品開発の環境構築に向けては、昨年タスクフォースを立ち上げ、患者団体からの意見を聞き、国内外の現状調査を行っている。今年は治験計画や同意説明文書のあり方の検討や、患者への治験情報の発信、患者が治験情報にアクセスするための枠組みなどの課題で優先順位を決め、業界として取り組みを強化する方向だ。

■承認後の有効性エビデンス、早期に添付文書に反映目指す

●薬事委員会
同協会薬事委員会は、総会で今年度の事業計画を承認した。申請薬事部会では「治験相談」「審査」「調査」「添付文書」の各ワーキンググループ(WG)で開発段階から承認までの医薬品医療機器総合機構()の各業務の効率化や次世代審査等の推進に向けての検討など、薬事制度部会では薬事規制に関する国際整合性と企業活動の効率性の観点で薬事制度に関する提言を行うとした。

昨年度からの変更点に関しては、申請薬事部会で国際共同治験WGを「一定の成果を収めた」ことから解散する一方、昨年度途中に立ち上げた添付文書WGについて、市販後に新たに得られた有効性エビデンスに関する添付文書への反映を目指す検討作業を開始する方針が打ち出された。

承認後の有効性エビデンスに関する添付文書への反映をめぐっては、昨年実施されたレギュラトリーサイエンス学会で、無増悪生存期間を主要評価項目に有効性が認められた治験データで承認された抗癌剤に関して、市販後に全生存期間の延長を認めるデータが得られた場合には、添付文書に速やかに追記する要望が上がっていた。今後、EFPIAやPhRMAと協働し、市販後に得られた有効性エビデンスの添付文書への反映に関しては、可能な限り早期に導入できるよう運用方法等を規制当局と検討を行う方向性にある。

一方、昨年10月から受付が開始された申請電子データの提出とゲートウェイの利用については、円滑に実施されるように、PMDA運用上に問題がないか、会員社にアンケート調査を行い、現状を把握したい考えだ。

■日本版GDPが重点課題‐連続生産技術導入も検討

●品質委員会
同協会品質委員会は総会で、今年度の事業計画として、国が策定予定の日本版GDPガイドラインの発出の支援や、新しい革新的な医薬品生産技術である“連続生産”の導入の検討など、GMP部会、製剤研究部会、ICHグループの各部門で取り組んでいくことを決めた。

GMP部会では、日本版GDPガイドラインの検討を進める。欧州のPIC/S-GDPを土台に、どのように国内で導入するべきかが昨年度に厚生労働省内で議論され、今年度に国がガイドラインを発出する予定となっている。GMP部会長の池松康之氏(エーザイ)は、「日本製薬団体連合会と共同でドラフティングしていき、国と協議しながら発出を支援していく」と述べた。

また、製剤研究部会では、従来の操作完了後に生産物を回収するバッチ製造方式から、原料や混合物を連続的に製造工程内に投入し、製造後の生産物を連続的に取り出す「連続生産」の新たな生産方法を検討する。2018年にICH品質トピックに上がる予定になっており、国内で導入する上での課題に対する見解や、承認申請時の留意事項に関する業界側の考え方をまとめ、規制当局・アカデミアへの提言を行う。

同部会長の鈴木博文氏()は「連続生産の品質保証に関する日本医療研究開発機構(AMED)研究班に製剤研究部会から6人が参加している。同研究班で検討した内容について、近々指針となる文書を作成し、公開する予定となっている」と語った。

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