新たな水晶体用線量計を用いて正確に測定評価
東北大学は4月26日、画像下治療(IVR)を行う放射線従事者の眼の水晶体被曝線量を正確に測定し、軽量型放射線防護メガネの防護効果を初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科放射線検査分野の千田浩一教授(災害科学国際研究所)と、仙台厚生病院の芳賀喜裕非常勤講師らのグループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」電子版に4月3日付で掲載されている。
画像はリリースより
近年、IVR等に携わる放射線従事者において、白内障等などの放射線障害の発症例が報告されており、「放射線白内障の閾線量の値は従来設定されていたものより低い」と考えられるようになってきていた。2011年に国際放射線防護委員会(ICRP)は、水晶体等価線量限度を従来の150mSv/年から20mSv/年へと大幅に引き下げる等という声明を発表し、2012年にはICRP勧告を出し注意喚起を促している。EU諸では、2018年度までにこの新勧告を取り入れることになっている。
ICRPや国際原子力機関(IAEA)は、水晶体線量評価について、測定単位は3mm線量当量を用いて、水晶体近傍位置で測定することを推奨しているが、現在の水晶体線量の測定方法は、頚部または胸部付近に装着した個人線量計によって測定され、測定単位は70μm線量当量(または1cm線量当量)で評価されている。そのため、放射線従事者の正確な水晶体被曝線量の測定評価は、現在は行われているとは言えなかった。
白内障など放射線障害の発症防止への貢献に期待
そこで研究グループは、水晶体被曝が特に多いと懸念されているIVR放射線従事者の水晶体被曝を、放射線防護メガネの内側にも配置することができる新しい線量計を使用して、より正確な測定評価を実施。半年間、医師・看護師それぞれ10名以上のIVR放射線従事者において測定評価した。
その結果、適切な放射線防護を行わないとICRP新勧告の水晶体線量限度の1つである20mSv/年を超過する危険性があることが判明。また、頚部に装着した個人線量計による測定値は過大評価する傾向があること、装着の負担が少ない軽量型の放射線防護メガネによって、約60%の水晶体被曝に対する遮蔽効果が得られることなど、多くの知見を明らかになったという。
今回の研究により、放射線医療従事者の白内障などの放射線障害の発症の防止への貢献が期待される。さらに、IVRを受ける患者の水晶体医療被曝評価への展開が期待できると研究グループは述べている。
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