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乳幼児期の腸内細菌叢成熟化が腸管感染抵抗性に重要であることを明らかに-慶大ら

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2017年04月25日 PM12:45

腸管病原菌感染に対する高い感受性は、腸内細菌叢が未成熟なことに起因

慶應義塾大学は4月21日、乳幼児期の腸内細菌叢の成熟化が腸管感染抵抗性に重要であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大薬学部の金倫基准教授(前ミシガン大学医学部病理学部門研究員)、同大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任准教授(JSTさきがけ研究者)、ミシガン大学医学部病理学部門のGabriel Núñez教授、坂本啓博士研究員、シカゴ大学病理学部門のCathryn R. Nagler教授らの研究グループによるもの。


画像はリリースより

乳幼児は腸管病原菌感染に対して感受性が高いことが知られているが、免疫系が未成熟であることが要因だと考えられていた。しかし近年、この免疫系の発達や腸管病原菌に対する感染防御に、腸内細菌叢が重要な役割を果たしていることが次第に明らかになってきた。腸内細菌叢は生後3年の間にダイナミックな変化を遂げ、大人型へと成熟していくことが知られているが、この過程で腸内細菌叢が腸管病原菌に対する感染抵抗性にどのように寄与しているのかは、未だ不明な点が多く残されていた。

研究グループは今回、無菌環境下で飼育され、腸内細菌をもたない無菌の成獣マウスの腸管内に、乳児マウスおよび成獣マウス由来の腸内細菌叢を移植する実験手法を用いることにより、腸管病原菌感染における腸内細菌叢の役割について解析。その結果、腸内細菌叢による病原菌への感染抵抗性は、乳児期の腸内細菌叢では低く、成獣期の腸内細菌叢では高いことがわかった。さらに、乳児の腸内細菌叢による腸管病原菌に対する定着抵抗性(CR)の低下は、成獣マウス腸内の優勢菌群であるクロストリジウム目菌群の欠如によることが、腸内細菌叢のメタゲノム解析により明らかになった。

クロストリジウム目菌群が腸管病原菌感染に対する抵抗性を強化

研究グループは、実際に乳児の腸内細菌叢を腸管内に定着させた成獣マウスにクロストリジウム目菌群を経口投与することで、腸管病原菌に対するCRが高くなり、病原菌感染による腸管組織傷害も抑えられること、別の優勢菌群であるバクテロイデス目菌群の経口投与ではそのような効果が見られないことを確認。乳児マウスにおいても、クロストリジウム目菌群の経口投与により、腸管病原菌に対する感染抵抗性が強化されたという。

クロストリジウム目菌群は、腸管病原菌に対する宿主のCRを強化するものの、クロストリジウム目菌群のみでは無菌マウスの腸管内で効率的に増えることができず、乳児の腸内細菌叢の存在によってその増殖が促進された。腸管内容物のメタボローム解析の結果、乳児の腸内細菌叢から産生される代謝物質が、クロストリジウム目菌群の腸管内での増殖を促進することがわかったという。

以上の結果から、乳幼児期における腸管病原菌感染症の予防には腸内細菌叢が重要であり、特にクロストリジウム目菌群が腸管病原菌に対する感染抵抗性を高めるのに重要な役割を担っていることが明らかになった。今回の研究は、乳幼児期に腸管感染症の感受性が高いことの一因として、腸内細菌叢が未成熟であることを明らかにしたものであり、今後は乳幼児の腸管感染抵抗性を強化するために、腸内細菌叢をターゲットにした新たな予防・治療法開発等の臨床応用への発展が期待されると、研究グループは述べている。

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