呼吸器領域における生物学的製剤の第3相試験
アストラゼネカ株式会社は4月21日、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤ベンラリズマブ(遺伝子組換え)の第3相国際共同試験(CALIMA試験)のサブ解析を発表した。重症気管支喘息をもつ日本人患者の治療において、標準治療薬にベンラリズマブを追加することにより、喘息増悪頻度を減少し、呼吸機能および喘息症状の改善を示す結果が得られたという。この結果は同日、第57回日本呼吸器学会学術講演会において報告された。
ベンラリズマブは、好酸球の表面に発現するIL-5受容体に対し直接的に作用するヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤。喘息患者のなかには、好酸球が炎症と気道過敏性を起こし、症状が重症化する患者がいるが、同剤は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を高め、IL-5受容体を発現している好酸球を速やかかつほぼ完全に除去する特徴を持つ。早期第1/2相試験では、24時間以内に効果発現することが確認されている。同剤は協和発酵キリンの完全出資子会社であるBioWa社から導入され、アストラゼネカのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンと協和発酵キリンが開発した。
CALIMA試験は、日本を含む世界11か国で実施した無作為二重盲検並行群間プラセボ対象比較試験。中用量から高用量の吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の併用療法を受けていてもコントロール不良の12~75歳の重症気管支喘息患者1,306例を対象に実施した。ICSとLABAでの治療への追加療法として、ベンラリズマブ30mgを4週ごとに投薬する4週群と、最初の3回は4週ごと、その後は8週ごとに投薬する8週群の2つの用量レジメンで、有効性と安全性を評価した。その結果は、2016年9月5日に欧州呼吸器学会(ERS)国際会議で発表され、「The Lancet」誌に掲載されている。
喘息増悪の年間発生率が83%低下
今回の日本人サブグループ解析は、CALIMA試験に参加した日本人患者83症例を対象として実施された。その結果、同剤の56週間投与により、ブラセボ投与群と比べて、喘息増悪の年間発生率が83%低下。さらに呼吸機能は、気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)で、最大334mL改善した。症状についても、合計喘息症状スコアで最大0.24改善したという。
なお、同剤投与群における有害事象はプラセボ群と同等で、そのほとんどが薬剤との関連性はないと判断されたという。発症頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎で、同剤投与に関連すると考えられる重篤な有害事象や死亡はなかった。
同剤はこれまでの主要試験において、患者の喘息増悪減少効果に加えて、呼吸機能を早く改善させるという結果が一貫して示されてきていた。同様の結果がCALIMA試験の日本人患者の解析においても示されたこととなる。同社は、協和発酵キリン株式会社が創製した技術であるPOTELLIGENT (R)(ポテリジェント)を応用したベンラリズマブが、日本の重症気管支喘息患者の新たな治療選択肢となることで、患者のQOL改善に役立てられるよう尽力していくとしている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース