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小型肝細胞の元となる前駆細胞を同定、継代培養可能な長期間培養法を確立-札幌医科大

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2017年04月24日 PM01:30

成熟肝細胞は増殖困難、ES/iPS細胞は腫瘍化懸念や機能不十分

札幌医科大学は4月20日、健常ラット成体肝臓に存在している小型肝細胞の前駆細胞を同定し、継代培養可能な長期間培養法を確立したと発表した。この研究は、同大学医学部附属フロンティア医学研究所組織再生学部門の石井雅之大学院生(現消化器・総合、乳 腺・内分泌外科学講座)、三高俊広教授らの研究グループが、同大学医学部の鈴木拓教授(分子生物学)および二宮孝文准教授(解剖学第一講座)と共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」の2017年4月号に掲載発表されている。


画像はリリースより

肝臓は再生能力の高い臓器として知られており、肝臓の2/3を切除しても、10日程でほぼ元の大きさに回復する。しかし、慢性的に障害された肝臓では成熟肝細胞の機能が低下し、再生能力も悪くなる。外から機能的な肝細胞を補充することができれば、肝疾患の治療に繋がると考えられるが、成熟肝細胞は生体外に取り出すと、増殖せず急速に分化機能を喪失することが問題だった。また、iPS細胞やES細胞からの肝細胞への分化誘導も報告されているが、腫瘍化の制御や肝細胞機能が充分ではないなどの課題がある。

CYP活性や胆汁分泌能をもつ成熟肝細胞へ分化誘導

そこで研究グループは、従来から肝臓に存在する前駆細胞()に着目し研究。小型肝細胞は増殖能が高く、凍結保存可能なことから細胞移植のソースとして有用であると考えていたが、唯一の弱点が細胞をまき直して増やし続ける、継代培養ができないことだった。今回はラットを用いて、高い増殖能と肝細胞機能を安定して長期間維持する小型肝細胞の培養方法の検討を試みたという。

その結果、初代培養した小型肝細胞を抗CD44抗体で分離し、Matrigelを塗布した培養皿で無血清培養すると、アルブミン分泌能など基本的な肝細胞機能を持ちながら増殖し、娘細胞を供給しながら幹細胞としての機能を維持する細胞が出現することを発見。継代可能で2か月以上増殖し続けるが、不死化はしなかったという。その細胞は、CYP活性や胆汁分泌能をもつ成熟肝細胞へ分化誘導することができ、移植モデルラット肝臓へ移植すると、肝臓内に生着して増殖し肝細胞に分化。一部の細胞は細胆管細胞にも分化したという。

この結果は、肝細胞を体外で増幅する手法の確立に繋がると期待される。また、ヒト肝臓にも小型肝細胞が存在していることはわかっているため、この方法と同様に増殖能の高い前駆細胞をヒト肝臓組織片から分離・同定することができれば、薬剤スクリーニングや細胞移植に用いることが可能な機能的なヒト肝細胞を大量に作出できる可能性があり、ドナー不足の解決にも繋がる、と同研究グループは述べている。

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